はじめに
「大好評楽天シリーズ」の続編として、直近の決算(2024年度通期)と株価の足取りを整理します。2025年5月14日に予定されている2025年1Q決算発表を前に、足元の数字と市場の評価を押さえておきましょう。
2024年度通期ハイライト
・連結売上高は28期連続の増収で2.3兆円(前年比約10%増)
・Non‑GAAP営業利益は7億円の黒字転換(前年▲1,600億円規模から大幅改善)
・IFRS営業利益は530億円と前年から約2,658億円改善
・AI活用プロジェクト「Triple 20」で約105億円の利益寄与、今期は倍増を計画
セグメント別の動き
インターネットサービス
売上1.3兆円(+5.8%)、Non‑GAAP営業利益851億円(+約30%)。国内ECの流通総額は4.6%増、広告事業は2,221億円と高採算で堅調
楽天カードの営業利益は前年同期比18.3%増。カード会員数と決済高ともに過去最高を更新
モバイル
売上4,407億円(+20.9%)。Non‑GAAP営業損失は▲2,089億円と前年比1,056億円改善し、2024年12月単月でEBITDA黒字化を達成
資金調達と財務改善策
モバイル設備投資と社債償還に備え、2025年3月にドル建てハイイールド債を20億ドルへ増額発行。旺盛な投資家需要を背景に利回りを高めて資金を確保しました。自己資金フローが改善し、モバイルの資金需要をグループ内キャッシュでまかなえる体制を整えつつあります。
株価の現状と評価
4月22日終値は858円。52週レンジは466円~892円で、安値から約84%上昇し、上場来高値に迫る水準です 。改善した決算とモバイル黒字化の見通しが追い風になっています。一方で高利回り債発行による財務リスクをどう管理するかが依然として論点です。アナリストコンセンサスは「アウトパフォーム」、目標株価平均はおよそ978円で、上値余地は+14%程度との試算も出ています 。
今後の注目ポイント
・5月14日発表の2025年1Q決算:モバイル事業が四半期ベースでEBITDA黒字入りできるかが最大焦点。
・資本政策:楽天カードや楽天証券の追加上場、モバイル子会社化など選択肢を示唆。
・AI×広告の収益化進展:高度なパーソナライズによる広告単価上昇が続くか。
・海外事業:EC・決済の北米・欧州拡大と投資回収ペース。
まとめ
2024年度は「売上成長の継続」と「黒字化基調への転換」を同時に実現し、株価も52週高値圏に回復しました。ただしモバイル関連の減損リスクと債務負担は残っており、財務健全化のスピードが今後の株価レンジを左右します。次回決算でのモバイル通期黒字ガイダンスが示されれば、時価総額の再評価余地はなお大きいと言えるでしょう。
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