はじめに
テスラは2025年6月にもテキサス州オースティンで既存のModel Yを活用した商用ロボタクシーサービスを開始する見込みであり、一方のWaymoはすでに今年3月から同市で完全自動運転(レベル4)サービスを展開している。両社は技術・ビジネスモデル・安全性の面で大きく異なるアプローチを採っており、今後の自動運転市場を占ううえで注目される対決となる。
技術比較
Visionのみで自動運転を実現しようとするテスラは、8台のカメラに加え超音波センサーとレーダーを組み合わせて「Full Self-Driving(FSD)β」を提供中だが、現在は常にドライバー監視が必要なレベル2相当にとどまる。一方WaymoはLiDAR、レーダー、カメラを統合したセンサー群を自社開発のソフトウェアスタックと組み合わせ、定められたジオフェンス内でドライバー不要のレベル4運行を実現している 。
サービスモデルと料金体系
テスラはオーナーがアイドル状態のModel Yをプラットフォームに登録し、乗客輸送で収益を得る「車両シェアリング型」モデルを想定。料金設定は正式公表前だが、従来のライドシェアを下回る水準に調整するとされる。一方Waymo OneはUberやLyftと同等の1回平均約22ドルの運賃でオンデマンドおよびサブスクリプションを提供し、既存の配車アプリ経由での利用も可能だ 。
運行実績と安全性
テスラのFSDベータ車両はすでに実道路で36億マイル以上を走行しているが、介入やシステム停止の詳細データは未公開だ。一方Waymoは2024年までに5670万マイル超の完全自動運転実績を公表し、定期的にディスエンゲージメント(介入)件数を報告するなど、安全性を透明化している 。
展開戦略
テスラはまず10~20台規模でオースティンに参入し、結果を踏まえて年内に他都市へ急拡大する計画を示唆している 。対するWaymoはシリコンバレー、フェニックス、ロサンゼルスなど段階的にサービスを広げ、2025年にはアトランタやワシントンD.C.でも商用化を目指す。さらにJaguar I-PACEやZeekrを生産するアリゾナ州メサ工場の共同設立など、車両調達面でも体制強化を進めている 。
投資家動向と市場インパクト
テスラ株はロボタクシーの具体的な実稼働が株価の大きなモメンタムになると期待され、2025年1~3月期決算後の4月下旬には「6月開始」の再言及を受けて一時4.3%の上昇を記録した 。一方で、Waymoの成熟した収益モデルや運行データの蓄積に対しては、市場から安定的なキャッシュフロー源としての評価が高まっている。
今後の展望
短期的にはオースティンでの実績が両社のテクノロジーベンチマークとなる。テスラは待機時間や完走率、介入頻度などの指標が良好であればVision中心の戦略が奏功し、他都市への迅速展開が正当化されるだろう。Waymoは既存市場での安全・収益性を基盤に、新興市場での価格調整と規制対応力を強化していくことになる。
結論
オースティンでの「初陣」は自動運転レースの分水嶺となる見込みだ。テスラのソフトウェア主導型アプローチとWaymoのハードウェア+ジオフェンス戦略は、いずれも一長一短がある。投資家は各社のサービスKPI、規制やパートナーシップの進捗、安全性データの開示状況を注視しつつ、自動運転市場での覇権争いを見守る必要がある。
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