【現状整理】
・6月23日、ドル円は一時147.5円まで下落。月初から3円超の円安ペースで、150円台への警戒感が強まっています。
・同日午前のブレント原油先物は77.8ドル。1か月で約20%上昇し、地政学リスク次第で100ドル超も視野に入るとの見方が台頭しています。
・背景には、米国とイスラエルによるイラン核施設への空爆拡大でホルムズ海峡封鎖懸念が再燃し、供給不安がプレミアムとして乗ったことがあります。
【エネルギー高が生む二面性】
(1)家計・内需企業への打撃
・4月の国内総合インフレ率は3.6%。食料・エネルギーが押し上げ要因で、BOJは追加利上げの可能性を示唆しています。
・政府は電気・ガス補助金を継続していますが、財政負担は累計4兆円を超え、限界が意識されています。
・円安と原油高のダブルパンチで、運輸・外食・小売・医薬品など輸入依存度の高い内需型企業はコスト吸収余力が乏しく、マージン圧迫が顕著です。
(2)輸出大手の“名目業績押し上げ”
・自動車・電子部品・機械などはドル建て売上が増え、円ベースの利益は拡大。トヨタは1円の円安で営業利益が450億円増える体質です。
・もっとも、原材料高や対米追加関税(自動車・半導体)で実質マージンは削がれつつあり、「輸出企業=全面勝ち組」とは言い切れません。
【銘柄・セクター比較の視点】
◯円安メリット最大化セクター
・完成車大手(トヨタ、SUBARU 等)
・電子部品(村田製、TDK 等)
・産業用ロボット(ファナック、安川電機)
◯コスト高インパクト直撃セクター
・電力・ガス(政府補助金縮小時の仕入れ負担)
・外食・食品スーパー(穀物・包装資材価格が上昇)
・航空・海運(燃油サーチャージ転嫁の限界)
【投資家のチェックポイント】
1)為替ヘッジ付き海外ETF
・円安ヘッジコストは年1.5〜2%程度だが、為替差損を平準化できるため、ドル建て株式・債券に安心してアクセス可能。
2)輸出株の“押し目”
・146〜150円で為替感応度の高い自動車・半導体関連を分散買い。短期的な原油ショックで調整する場面は拾い場。
3)コモディティ・エネルギーETF
・WTI/ブレントが100ドルを試す局面では、先物連動型ETFでショートタームのヘッジ効果を狙う。
【まとめ】
円安は「名目GDP押し上げ」「輸出企業増益」という光の側面と、「家計の購買力低下」「コストプッシュ型インフレ加速」という影の側面が共存します。足元の地政学リスクが長期化するか否かが、150円トライと100ドル超の原油という“悪い円安”シナリオを左右します。投資家は為替とエネルギー価格のヘッジ手段を点検しつつ、セクター間の勝敗を冷静に見極める局面です。
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