【はじめに】
世界的に金利上昇局面が一服しつつある今、ネオバンク各社は「預金=寝かせる資金」から「流して稼ぐ資産」へ発想を転換しています。Wise、Revolut、楽天銀行などが低スプレッドかつ高速な為替取引を武器に、送金口座を運用ゲートウェイへ進化させる狙いを整理します。
【1 為替コスト“ゼロ競争”の裏にある収益モデル】
・Wiseの平均為替手数料は0.5%台まで低下しましたが、同社は顧客残高増による金利収益とBtoB向けプラットフォーム提供料で利益を上積みする構造へ移行しています。
・Revolutも為替スプレッドを抑えつつ、サブスクリプションとカード決済手数料で差益を確保し、2024年度に初の10億ドル超純利益を達成しました。
【2 「預金」ではなく「流動資産」で稼ぐ仕組み】
・Wiseは40通貨をワンアカウントで保有できる口座残高を拡大し、利息と各種サービス手数料の“複合収益”モデルを強化。金利が低下してもクロスボーダー決済量の拡大が収益を下支えします。
・Revolutはアプリ内に株式・暗号資産・高利回り普通預金を統合。外貨換金後の“滞留資金”を自社エコシステム内に循環させ、金利差+運用手数料を獲得する流れを確立しています。
【3 日本のメガバンクが進める“外貨預金のUI化”との対比】
・楽天銀行は楽天証券との「マネーブリッジ」で自動スイープ機能を提供し、外貨や投信へ即時振替するUXを磨いています。
・SBI FXトレードNEOBANKはFX待機資金に年0.30%の普通預金金利を付与し、為替取引口座と預金残高をシームレスに接続。
・業界最高水準の年0.41%金利を掲げるMATSUI Bankなど、新規参入組も「高金利×投資ワンストップUI」で差別化を図っています。
【4 資産運用初級者がネオバンク経由で投資へ向かう導線】
・Revolutは英国で証券取引ライセンスを取得し、2025年からUK・EU株の直接売買をアプリ内で提供予定。為替→預金→株式まで“一気通貫”の導線が整います。
・Wiseは提携証券会社経由でETF購入を試験展開中と報じられ、ネオバンク口座経由の「小口・自動積立」需要が拡大する見込みです。
【おわりに】
為替スプレッドの極小化だけではビジネスは続きません。ネオバンク各社は①口座残高を運用原資にする金利収益、②カード・サブスク課金、③証券・運用手数料という“三層構造”で収益安定化を図っています。日本の金融機関が打つべき手は「レート競争」よりも、預金を投資へ橋渡しするインターフェースとサービス設計の再定義と言えそうです。
#ネオバンク #金融DX #為替スプレッド #預金の再定義
コメント