#645 スプレッド圧縮”で利益確保? ネオバンクが仕掛ける“預金の再定義

【はじめに】

世界的に金利上昇局面が一服しつつある今、ネオバンク各社は「預金=寝かせる資金」から「流して稼ぐ資産」へ発想を転換しています。Wise、Revolut、楽天銀行などが低スプレッドかつ高速な為替取引を武器に、送金口座を運用ゲートウェイへ進化させる狙いを整理します。

 

【1 為替コスト“ゼロ競争”の裏にある収益モデル】

・Wiseの平均為替手数料は0.5%台まで低下しましたが、同社は顧客残高増による金利収益とBtoB向けプラットフォーム提供料で利益を上積みする構造へ移行しています。

・Revolutも為替スプレッドを抑えつつ、サブスクリプションとカード決済手数料で差益を確保し、2024年度に初の10億ドル超純利益を達成しました。

 

【2 「預金」ではなく「流動資産」で稼ぐ仕組み】

・Wiseは40通貨をワンアカウントで保有できる口座残高を拡大し、利息と各種サービス手数料の“複合収益”モデルを強化。金利が低下してもクロスボーダー決済量の拡大が収益を下支えします。

・Revolutはアプリ内に株式・暗号資産・高利回り普通預金を統合。外貨換金後の“滞留資金”を自社エコシステム内に循環させ、金利差+運用手数料を獲得する流れを確立しています。

 

【3 日本のメガバンクが進める“外貨預金のUI化”との対比】

楽天銀行楽天証券との「マネーブリッジ」で自動スイープ機能を提供し、外貨や投信へ即時振替するUXを磨いています。

・SBI FXトレードNEOBANKはFX待機資金に年0.30%の普通預金金利を付与し、為替取引口座と預金残高をシームレスに接続。

・業界最高水準の年0.41%金利を掲げるMATSUI Bankなど、新規参入組も「高金利×投資ワンストップUI」で差別化を図っています。

 

【4 資産運用初級者がネオバンク経由で投資へ向かう導線】

・Revolutは英国で証券取引ライセンスを取得し、2025年からUK・EU株の直接売買をアプリ内で提供予定。為替→預金→株式まで“一気通貫”の導線が整います。

・Wiseは提携証券会社経由でETF購入を試験展開中と報じられ、ネオバンク口座経由の「小口・自動積立」需要が拡大する見込みです。

 

【おわりに】

為替スプレッドの極小化だけではビジネスは続きません。ネオバンク各社は①口座残高を運用原資にする金利収益、②カード・サブスク課金、③証券・運用手数料という“三層構造”で収益安定化を図っています。日本の金融機関が打つべき手は「レート競争」よりも、預金を投資へ橋渡しするインターフェースとサービス設計の再定義と言えそうです。

 

ハッシュタグ

#ネオバンク #金融DX #為替スプレッド #預金の再定義

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