【イントロダクション】
人手不足・燃料高・24年問題(ドライバー残業規制)の三重苦が続き、2025年も物流費は企業の損益計算書に重くのしかかっています。日銀短観や財務省統計ではまだ消費拡大の気配が残る一方、物流コストの上昇は製造・小売・外食など幅広いセクターの利益率を侵食し、株価バリュエーションにも影響を与え始めました。本稿では最新データを基に“物流ショック”の実像と投資家が注目すべき銘柄を整理します。
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1 物流費はどこまで上がったのか
・売上高物流コスト比率は2024年度5.44%と前年から0.44ポイント上昇し、2000年代以降で2番目の高水準
・トラック成約運賃指数(WebKIT)は2025年4月に137と、季節要因を含んでも過去最高レンジを更新
・帝国データバンク調査では「物流費の価格転嫁率」は34.7%にとどまり、企業がコストの約3分の2を自腹で吸収している構図が鮮明
2 業績インパクト―小売・外食・製造は“値上げ疲れ”
・セブン‐イレブン・ジャパンは既存店売上を守ったものの、光熱費・物流費の上昇が響き営業利益が7%減(2025年2月期)
・外食チェーン各社も食材原価に加えて仕入れ物流費がボトムラインを圧迫。今期ガイダンスで「宅配手数料の再値上げ」を示唆する企業が相次いでいます。
・製造業では部材調達コストと同時に「納品輸送費」が利益率低下の要因に。特に重量物を扱う化学・建材でマージン悪化が目立ちます。
3 企業はどう動くか―自社物流強化と倉庫自動化
・セイノーホールディングスは東京―大阪間で自動運転トラックの幹線輸送実証を開始。ドライバー不足を解消し長距離コストを抑える狙い
・MonotaROは茨城県水戸市に床面積7.4万m²の次世代DCを着工。自動倉庫・AGV・自動梱包機をフル導入し、既存センター比で生産性3倍を目指す
・EC各社や食品大手でも、マテハン投資・AIルーティング最適化・ラストワンマイル共配網整備といった“物流DX”が急ピッチで進行中。
4 投資家目線で注目したい“物流耐性銘柄”
●物流そのものが収益源
・SGホールディングス(9143):宅配便値上げ効果と法人ソリューション拡大でマージン改善の余地
・日本通運(NXホールディングス 9147):国際フォワーディング回復と国内重量品特需の二本柱
・セイノーHD(9076):共同配送プラットフォームと自動運転化でコスト優位性
●荷主だが物流自前化で優位
・MonotaRO(3064):フルフィルメント自動化で回転率とサービス水準を両立
・ファーストリテイリング(9983):有明・六甲のロボティクス倉庫が在庫最適化に寄与
●インフラ・REIT
・日本プロロジスリート(3283)など大型物流REIT:賃料改定力と長期契約でインカム安定
5 ポートフォリオの組み方―“物流コスト転嫁ギャップ”を見る
・売上高物流コスト比率が高いのに値上げ余地が小さい業界は要注意(外食、中小食品、低価格アパレル)。
・一方、物流企業と“物流内製化済み”企業のペアトレードでコストシフトを取りに行く戦略が有効。
・物流関連設備やロボティクスを手掛ける機械・IT銘柄(ZMP、MHI、Daifuku)にも波及効果が期待。
【まとめ】
2025年は人手不足対策と燃料市況が落ち着かない限り、物流費インフレが企業業績のファクターとして居座ります。企業が対策を講じる速度には差があり、そのギャップが株価パフォーマンスに映り始めました。投資家は「物流費の転嫁力」「自動化投資の進捗」「幹線輸送の共同化・自動運転化」の3点をチェックポイントに、ディフェンシブな物流銘柄や自社物流強化企業を組み込みつつ、コスト吸収力の低い銘柄へのエクスポージャーを絞るタイミングに入っています。
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