#646 新NISAをやめる人が増える本当の理由と、その“続け方”ガイド

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2024年末から2025年初頭にかけて、国内外の株式相場はグロース株を中心に調整局面を迎えました。TOPIXグロース指数は1月末までに約12%下落し、米ナスダック総合も同期間に10%を超える調整となっています。こうした値動きは、とりわけスタート直後の新NISAでリスク資産に触れたばかりの投資初心者に強い不安を与えました。

 

1 市場の変動と短期的な損失

・下落相場では「含み損=失敗」と感じやすく、心理的ハードルが一気に高まります。

・実際、QUICK資産運用研究所の調査では解約者の平均保有期間が2.7年と短く、長期非課税メリットを生かし切れずに売却してしまう傾向が確認されています。

 

2 投資知識の不足と情報の偏り

SNSや動画で「毎月◯万円積み立てれば老後は安心」といった楽観的なメッセージが拡散され、リスク許容度を超えた積立額を設定したケースが目立ちました。

・価格変動のある商品は、上がっているときに「自分の選択は正しい」と思いがちですが、下落するとすぐに悲観に転じる―行動ファイナンスでいうプロスペクト理論が典型的に現れます。

 

3 生活費の圧迫と資金需要の増加

総務省統計局が示す2024年度平均の消費者物価指数は前年比+2.8%。電気・ガス料金の補助縮小や食料品の値上げで、可処分所得が圧迫されました。

・家計のキャッシュフローが逼迫すると、真っ先に止めるのが「毎月の積立」。リスク資産を売却して現金化してしまう例も少なくありません。

 

4 解約・停止のデメリット――非課税メリットと複利の喪失

・積立を一時停止すると、非課税運用期間が途切れ、再開時には市場がすでに反転していて“高値づかみ”になるリスクがあります。

・売却しても枠がすぐ復活するわけではなく、年間上限360万円の範囲で翌年以降にしか取り戻せません。

 

5 個人投資家が今日から取れる3つの対策

生活防衛資金を先に確保し、余裕資金だけをNISAに充てる

・積立停止ではなく「減額」で対応し、ドルコスト平均法の効果をつなぐ

・情報源を金融庁やIFAなど複数ルートに分散し、ポジティブ・バイアスを回避する

 

6 金融機関とメディアに求められる役割

・“長期・積立・分散”の原則を繰り返し啓発し、下落局面こそ継続投資の価値が高まることを可視化する

・家計管理と投資を結び付けたアプリ機能や、預貯金との併用プランを提示して資金繰り不安を和らげる

 

まとめ

新NISA解約や積立停止の背景には、相場変動による短期的損失、リテラシー不足、そして生活費の圧迫という三つの構造的要因があります。制度を最大限に生かすには、キャッシュフロー管理と情報バイアスの是正、そして“続けられる仕組み”づくりが欠かせません。市場サイクルは繰り返します。下落相場でルールを守れた投資家だけが、長期非課税という果実を収穫できるのです。

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