はじめに
金スポット価格は2025年3月14日に史上初めて1オンス=3000ドル(約44万6000円)を上回り、以降も高値圏で推移しています。この節目突破の背景には、トランプ米政権の関税政策による世界的な貿易不確実性の高まり、各国中央銀行による積極的な買い入れ、そして経済・金融市場のボラティリティ上昇があります。これにより、安全資産としての金に対する投資ニーズが再評価され、市場に大きなインパクトを与えています 。
価格推移と歴史的節目
金価格は2025年2月初旬に1オンス=2900ドルの大台を突破後、3月14日に3001.20ドルまで上昇。3月18日には再び3000ドル台を回復し、過去最高値を更新しました。直近の連日の高値は、従来の節目を軽々と越える勢いを示しており、これまでの長期トレンドを刷新する動きとなっています 。
主な上昇要因
トランプ政権の関税政策:米中摩擦や対EU制裁など、保護主義的な関税措置が世界貿易に不透明感をもたらし、金への逃避買いを誘発。
中央銀行の買い増し:ロシアや中国をはじめとする主要中銀が外貨準備の多角化を進め、金を大量に買い増していることが価格を押し上げています。
米ドル軟調:ドルインデックスが0.4%下落した局面で、ドル建て資産である金の魅力が増幅しました。
これらが相まって、「恐慌指標」とも呼ばれる金への投資心理が強まっています 。
市場の受け止め方と資金流入動向
金ETF(上場投資信託)には2025年4月だけで約110億ドルの資金が流入し、運用残高は3970億ドルに達しました。世界のファンドマネジャー調査では58%が「貿易戦争下で最も安全な資産は金」と回答しており、機関投資家のポジション構築が鮮明です。Jeff Gundlach氏はさらに金価格が4000ドルまで上昇余地があると予測しており、強気ムードに拍車をかけています 。
投資家への示唆
過去最高値圏での金は割高に見える一方、ポートフォリオのリスクヘッジ手段としての価値は依然として高いといえます。株式市場の調整局面や債券利回りの低下局面で、金は相関の低い安全資産として機能してきました。投資割合を2~5%程度に留めることで、全体リターンの安定化が期待できます 。
今後の見通し
短中期的には、米連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策や貿易交渉の進展がカギを握ります。利上げの見送りや関税引き上げが続く場合、安全資産需要は根強く、3500~3700ドルの高値追随シナリオも現実味を帯びます。一方、世界経済が予想以上に堅調でリスクオンのムードが強まれば、金は調整局面を迎える可能性もあります。
結論
1オンス=3000ドル突破は金市場の構造変化を示す重要なシグナルと言えます。今後も地政学リスクやインフレ懸念、金融政策動向を注視しつつ、金を安全資産としてどのようにポートフォリオに組み込むかを検討することが、賢明な投資判断につながるでしょう。
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