Moderna, Inc.(NASDAQ: MRNA)は2025年5月1日に2025年第1四半期(1月1日~3月31日)決算を発表し、売上高1.08億ドル、GAAPベースの純損失10億ドル、1株当たりGAAP損失(EPS)2.52ドルという結果を報告しました。これらの数値は、アナリスト予想をわずかに上回る売上高と、予想を大きく下回る損失幅縮小を反映しています 。
売上高と収益動向
第1四半期の売上高は1.08億ドルと、前年同期比35%減少しましたが、アナリスト予想の1.062億ドルを上回りました。これはポストパンデミック後のCOVID-19ワクチン需要減少を背景にしたものでありながらも、同社のコスト削減努力により一定の下支えがあったためです 。一方、GAAPベースの純損失は10億ドルで、前年同期の12億ドル損失から改善しました。1株当たり当期損失は2.52ドルで、市場予想の3.14ドル損失を大きく下回り、コスト管理の成果が表れています 。
主要製品別パフォーマンス
主力製品のCOVID-19ワクチン「Spikevax」は8,400万ドル(前年同期比約50%減)、RSVワクチン「mRESVIA」は200万ドルの売上を計上しました。アナリスト予想はそれぞれ7,567万ドルおよび330万ドルだったため、Spikevaxは上回ったものの、mRESVIAは期待に届きませんでした。競合企業(Pfizer、GSK)製品との競争激化や米CDCの単回接種推奨が背景にあるとみられます 。
コスト構造改革の取り組み
Modernaは2027年までに年間オペレーティングコストを最大17億ドル削減し、同年の運営費を47億~50億ドルに抑制する計画を発表しました。これにより、R&Dや製造能力への重点投資を継続しつつ、ビジネスモデルを持続可能なものへと転換する意図がうかがえます。2025年中には主にオンコロジー領域への資源配分を強化するとコメントしています 。
通期ガイダンスの再確認
同社は2025年通期の製品売上見通しを15億~25億ドルと再提示しました。そのうち約2億ドルを上半期で計上すると見込んでおり、需要の季節性(特に秋冬の呼吸器疾患シーズン)に依存する構造となっています。コスト削減効果と新製品承認タイミングが後半に集中する見通しから、下半期に売上の強い伸びを期待しています 。
パイプラインと製品承認動向
Modernaはオンコロジーを中心に最大10製品の承認取得に向けた開発を進めています。加えて、COVID-19とインフルエンザを一度に予防するコンビネーションワクチンについては、FDAが追加の後期試験データを要求したため、2026年まで承認取得を見込んでいません。これにより2025年秋の発売計画は後ろ倒しとなりましたが、長期的なポートフォリオ強化の一環と位置づけています 。
市場の反応と財務基盤
決算発表後、同社株価は前日比3.3%下落し、パンデミック後のピークから約90%の下落率となりました。投資家は売上減速や承認遅延リスクを懸念していますが、現金および現金同等物は84億ドルを維持しており、研究開発や提携投資への余裕は確保されています 。
投資家向け見解と今後の展望
ポストパンデミック期における収益基盤の再構築と、オンコロジーを含む多様なmRNAプラットフォームへのシフトが同社の中長期的価値を左右します。短期的にはCOVID-19/RSVワクチン需要の下支えが課題となるものの、コスト管理とパイプライン強化が順調に進めば、2026~2027年の収益回復が見込めるでしょう。投資家はガイダンス達成の進捗と承認リスクの動向に注目すべきです。
以上をもとに、Modernaの2025年第1四半期決算は、収益面での逆風をコスト削減とパイプライン戦略でカバーし、将来の成長機会に向けたリソース配分を本格化させる局面といえます。今後の市場展開と臨床進捗に注目が集まります。
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