#609 Starbucks決算分析:“Back to Starbucks”戦略の進捗と課題

本稿では2025年3月期第2四半期(2025年1月~3月)の決算内容をもとに、Starbucks Corporation(SBUX)の業績動向と今後の見通しを整理する。

 

売上高と利益動向

2025年第2四半期の全社売上高は前年同期比2%増の約88億ドルとなったものの、アナリスト予想(約88.3億ドル)には若干届かなかった  。調整後1株当たり利益(non-GAAP EPS)は前年の0.68ドルから0.41ドルへ40%減少し、市場予想の0.49ドルを下回った  。GAAPベースではEPSは0.34ドル(前年同期1.38ドル)と50%減となっている  。業績未達を受け、発表直後の時間外取引で株価は6%超下落した。

 

セグメント別業績

北米事業の売上高は6.5億ドルで前年同期比1%増に留まった。これは新規出店効果が5%の売上寄与をもたらした一方、既存店舗の客数減少が足かせとなったためである  。国際事業は新規出店とライセンス事業の拡大により1.9億ドル(同6%増)を達成した  。一方、チャネル開発(ボトル飲料等)はグローバル・コーヒー・アライアンスの減収もあり4.09億ドル(同2%減)となった。

 

営業利益面では全社で約7.48億ドル(前年同期11.0億ドル)に落ち込み、営業利益率は11.6%から18.0%へ大きく圧迫された  。特に“Back to Starbucks”戦略に伴う人件費増加やグローバル組織再編コストが利益面を重くしている。

 

“Back to Starbucks”戦略の進捗と課題

CEOのBrian Niccol氏は店舗体験の再強化、モバイルオーダー最適化、店舗デザイン刷新などを掲げ、顧客満足度改善を目指す。Placer.aiのデータでは顧客の利用動向に変化が見られる一方、小規模チェーンとの競争激化や消費者の節約志向は依然として強い  。特に北米既存店売上高が前年同期比2%減少した点は、同戦略の効果がまだ十分に浸透していないことを示唆する。

 

同社は待ち時間短縮プログラムを導入し、全店舗の平均待ち時間を4分以内に抑えるパイロットを展開中。これを年内に3,000店舗へ拡大する計画だが、これが売上・利益改善にどこまで寄与するかは今後のポイントとなる  。

 

今後の見通し

世界的なインフレ継続や新たな関税リスクがコスト面での圧迫要因となる可能性がある。だがNiccol氏はコーヒーを“手頃な贅沢”と位置づけ、消費者の需要は底堅いと楽観視している  。次のカギは、既存店の客単価向上と顧客回転率の改善をどれだけ早期に実現できるかだ。

 

まとめ

今回の決算は売上増にもかかわらず利益面で苦戦した内容となった。出店戦略や顧客体験向上策は一定の成果を見せつつも、既存店の集客減やコスト増が課題として残る。今後は“Back to Starbucks”の各施策が現場レベルで機能し、顧客回帰と収益改善につながるかを注視したい。

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