【序章】グロース一辺倒相場にブレーキ
5月19日時点の米10年国債利回りは4.46%と、年初来のレンジ上限に再接近した。FRBは5月会合でも政策金利を4.25〜4.50%で据え置き、「当面はインフレ警戒が優先」と明言。市場にくすぶっていた年内利下げ観測は大幅に後退し、PERの高いハイテク株から配当利回りの高いディフェンシブ銘柄へ資金が移りつつある。
【1】債券利回り上昇と株式利回りの力学
・米国ではリスクフリーレートが4.5%前後に張り付く一方、S&P500の予想配当利回りは約1.5%。配当再投資戦略の妙味は相対的に薄れるが、「リセッション懸念が残る局面ではキャッシュフローの安定性が評価される」という声が多い。
・一方、日本の10年国債利回りは1.52%。実質金利がなおマイナス圏にあるため、3〜5%台の配当株は「債券代替」色を強める。
【2】“再評価組”2銘柄の現在地
JT(2914)――配当利回り4.3%
海外たばこ事業の価格決定力を背景に、24期連続で実質増配(自社株買い含む)。為替の円安基調は営業利益を押し上げ、24年12月期も増配見通し。Payout Ratio(配当性向)74%と、キャッシュフローに裏付けられた厚みが魅力。
三菱HCキャピタル(8593)――配当利回り3.9%
航空機・船舶リースに強みを持つ総合リース大手。利払いコスト上昇の影響を受けにくい固定金利運用比率が高く、資産売却益も利益の底上げ要因。中期経営計画で「DOE※3.5%以上」を掲げ、配当と自社株買いを両輪に株主還元を強化。
【3】ポートフォリオでの位置づけ
・米ドル建て債券で4.5%を確保できる環境下でも、日本株の高配当銘柄は(1)為替ヘッジコストが低い、(2)JGBとのスプレッドがまだ大きい、という2点で依然優位性がある。
・物価上昇率が緩やかな日本では、名目3〜5%配当が実質リターンに直結しやすい点も忘れたくない。
【4】投資判断のチェックリスト
・利回りだけでなく「配当カバー率(営業CF/配当総額)」を見る
・資本政策(自社株買い・機動的な増配方針)の開示姿勢
・長期金利1%上昇シナリオでの財務インパクト試算の有無
【結論】“金利高止まり”時代の新ディフェンシブ
米金利が4〜5%台で高止まりする間、株式市場は「成長シナリオへの賭け」と「安定インカム確保」の二極化が進む可能性が高い。日本株の高配当セクターは、依然債券との利回り格差が大きく、リスク許容度を抑えつつキャッシュフローを積み上げたい投資家にとって有効な受け皿となろう。
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