#569ミシュラン:2025年1–3月期(第1四半期)決算速報と投資視点

■ サマリー

フランスのタイヤ大手ミシュランが4月24日に発表した2025年1–3月期決算は、売上高が65億1500万ユーロ(前年同期比‑1.9%)と小幅減。OE(自動車メーカー向け)需要の落ち込みで販売数量が同‑7.3%となった一方、価格・製品ミックス改善(+4.8%)が減収幅を抑えた。経営陣は「地政学リスクと景気変動が激しいが、通期で24年実績を上回る営業利益(為替一定ベース)と17億ユーロ超のフリーCFを維持」と従来計画を据え置いている。

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■ 四半期ハイライト

・ 売上総額:65.15億ユーロ(‑1.9%)

・ ボリューム:‑7.3%(OE各市場の縮小が継続)

・ 価格/ミックス効果:+4.8%(高付加価値18インチ以上タイヤが乗用車販売の67%へ拡大)

・ 為替効果:+0.7%(ドル高が追い風)

・ ガイダンス:2025年通期も営業利益は24年比増、FCFは17億ユーロ超を確保見通し

 

■ セグメント別動向

【RS1 自動車・二輪】

売上高35.59億ユーロ(+1.2%)。OE減を価格改善と交換用タイヤ(特に18インチ以上)の伸びが吸収。中国を除き交換用が堅調。

 

【RS2 ロードトランスポーテーション(トラック等)】

売上高15.29億ユーロ(‑3.5%)。欧米OE需要が二桁減。一方、フリート向けコネクテッドサービスが欧州・南米で拡大。

 

【RS3 スペシャルティ&ポリマ―コンポジット】

売上高14.27億ユーロ(‑7.3%)。農業・建設向けOEが低迷する一方、鉱山用と航空機用タイヤは回復傾向。

 

■ 2024年度通期実績との比較

24年通期売上高は271.93億ユーロ、セグメント営業利益は33.78億ユーロ、FCFは22.25億ユーロ。営業利益率(為替一定)は12.6%を維持し、財務体質の強さを示した。25年は「営業利益増・FCF17億ユーロ超」の目標を掲げており、期初の進捗は想定線とみられる。

 

■ 経営・ESGトピック

・ 3月にS&PとFitchが長期格付けを“A‑”から“A”へ一段階引き上げ(財務健全性を評価)。

・ チリ・アントファガスタ地区で鉱山用タイヤのリサイクル事業を開始、循環型ビジネスモデルを加速。

・ WISAMO翼帆システムなど脱炭素関連ソリューションへの投資を継続。

 

■ 投資視点

 

OE市場の底打ちは下期(7~12月)との見方が支配的。短期的に数量面は重いが、価格・ミックス改善でマージンは防衛可能。
為替(ユーロ安/ドル高)と原材料コスト(合成ゴム・原油派生品)の下落が利益を下支え。
ESG格上げ・鉱山リサイクルの具体策が、中長期投資家の評価ポイント。
主要リスクは欧州自動車需要の一段の失速と地政学リスクによる供給網寸断。代替シナリオとしては北米現地生産の比率引き上げなどローカル to ローカル戦略が奏功する可能性。

 

 

■ まとめ

第1四半期は数量減で減収となったものの、価格力と製品ミックス改善で収益性を維持。24年通期で示した財務耐性が25年も継続するかが焦点となる。足元ではOE需要の「冬」が長引くが、中長期では高インチ化・サービス事業拡大により安定成長軌道を描けるとみる。投資家は下期回復シナリオの現実味とキャッシュ創出力に注目したい。

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