#570 ブリヂストン 2024年12月期決算レビュー──増収も減益、構造改革費用の山を越えられるか

【概要】

2月17日に公表された2024年12月期(以下 FY2024)決算は、売上収益4兆4,301億円(前年比+3%)と増収を確保した一方、営業利益は4,433億円(▲8%)と減益に沈みました。調整後営業利益はわずかに増えたものの、欧州事業の減損を含む再編費用が響いて GAAP ベースではマイナス。純利益も2,850億円(▲14%)と二桁減となり、構造改革の“痛み”が数字に表れた期でした。

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【主要数値ハイライト(継続事業ベース)】

・売上収益  4兆4,301億円(+3%)

・調整後営業利益 4,833億円(+1%) 利益率10.9%(▲0.2pt)

・営業利益  4,433億円(▲8%)

・親会社帰属利益 2,850億円(▲14%)

・ROIC    8.2%(▲0.5pt)

ROE    8.1%(▲2.3pt)

 

【セグメント別動向とポイント】

① プレミアム乗用車タイヤ

 18インチ以上の高リム径タイヤは北米・欧州で横ばい、日本では台数増。高単価製品へのシフトが売上 mix を押し上げましたが、EV 市場減速で新車向け数量は伸び悩みました。

② 交換用タイヤ

 北米ではタイ輸入関税引き下げを背景に低価格品が流入し数量減。欧州は需要回復、日本とアジアは横ばい。全体として価格・製品 mix で下支えした格好です。

③ トラック・バス・OTR(鉱山車両)

 超大型 OTR は堅調だったもののトラック・バス用は全地域で減少。北米在庫調整の一巡が下期に回復を促しました。

多角化/ソリューション事業

 モビリティソリューション(TPMS、リトレッド等)は高単価サービスが伸長。利益率向上に貢献しました。

 

【費用構造と再編の影響】

・欧州事業の資産減損や北南米拠点の再編で約400億円規模の一過性費用を計上し、営業利益を圧迫。プレミアム領域集中(Dan-Totsu 製品)と不採算事業整理(Second Stage)が続く中で“守り”のコストが前面に出ました。

・一方、円安効果・価格是正・グローバル調達改革(BCMA など)でコスト増を吸収し、調整後ベースでは黒字維持。

 

キャッシュフローと株主還元】

営業CFは6,000億円前後(21MBP 比10%増)。配当は1株210円へ 5%増配。2025年以降は連結配当性向を40%→50%へ引き上げ、25年配当予想を230円と示しました。あわせて自己株取得(上限3,000億円)も実施予定で、資本効率重視が鮮明です。

 

【2025年12月期(FY2025)会社計画】

・売上収益 4兆3,300億円(▲2%、為替除き+2%)

・調整後営業利益 5,050億円(+4%) 利益率11.7%

・親会社帰属利益 2,530億円(▲11%)

・ROIC 9.2%(+1.0pt)

為替前提は US$=145円、€=150円と円高設定ながら、プレミアム領域の値上げ・ミックス改善とコスト削減で営業利益率を1pt強引き上げる計画です。

 

【今後の注目テーマ】

・5月15日発表予定の2025年1Q決算(東京14:30)で、値上げ効果と北米市況回復の初速を確認。

・低価格輸入タイヤの流入対策──ブランド価値とサステナビリティ(E8 Commitment)訴求が鍵。

・天然ゴム価格と物流コストの動向。

・ソリューション事業(タイヤライフサイクル管理)の収益貢献拡大。

・資本政策:自社株買いの規模とタイミング。

 

【投資ストーリー】

強固なブランドとプレミアム路線は長期的な収益回復力を支える一方、短期的には欧州減損や北米数量の戻り待ちで EPS が伸びづらい。2025年度の営業利益率改善計画が達成できれば ROIC 9%台を回復し、株主還元拡充の持続性も高まる。リスクは①EV 市場の予想外の失速、②低価格品浸食による追加値下げ、③為替前提の逆風。現株価(5月3日終値 6,022円)での PER は約12倍と同業比で中立圏、配当利回りは3.8%水準。中期(2〜3年)でのプレミアム化・ソリューション拡大を評価できるかが投資判断の分かれ目です。

 

【まとめ】

FY2024は「守りの一年」で減益決算となったものの、再編費用の計上でバランスシートの膿を出し切りました。FY2025はプレミアムタイヤの販売ミックス向上とコスト改革で利益率反転を狙う局面です。株主還元の強化も追い風となるなか、足元の需要回復ペースと価格支配力を1Qで見極めたいところです。

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