#568 Synthos 最新決算分析(2024 通期・速報ベース) ――ポーランド化学大手の足元業績と中期見通し――

■ 会社概要と市場環境

Synthos S.A. は合成ゴムと断熱材で欧州首位級のシェアを持つ化学メーカー。自動車タイヤ向け SSBR/BR、建材向け EPS/XPS などが主力で、近年は再エネや SMR(小型モジュール炉)を手掛ける Synthos Green Energy も育成している。2023 年は欧州建設不況、エネルギー高、在庫調整の三重苦で減収減益となった。売上高 9,024 億ポーランドズロチ(PLN)、純利益 5.53 億 PLN と 2022 年比で二桁減となり、厳しい環境下での耐久力が問われた。

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■ 2024 通期(決算発表は4月24日予定)

4月24日に Investor Meeting が予定されているものの、正式な決算数値は公表前だ。ただし格付機関の公開情報および3Q 時点のモニタリングデータからおおよその動向はつかめる。

 

・ Fitch Ratings は 2024 年 EBITDA を約 8.3 億 PLN(対前年比 +5% 程度)、ネットレバレッジ 3.8 倍と予測。需要低迷でマージンが圧迫される一方、運転資本の改善とコスト削減で下値を支える構図とみている。

・ Moody’s(2024年12月更新)は 3Q 時点で「建設向けスチレン系樹脂が弱含むが、合成ゴムの価格移転力が下支え」と分析し、総合的に高水準のレバレッジを警戒。

・ 株式市場では時価総額 64.7 億 PLN、P/E 15.9 倍(4月末時点)。高い再投資負担とマクロ逆風を織り込みつつも、ゴム事業の底打ち期待が株価を下支えしている。

 

現時点の手掛かり ESG/成長投資

合成ゴム新ラインの高効率化投資(稼働率引上げと消費電力‑10%)

OSGE(Orlen × Synthos JV)による SMR 建設候補地の選定加速

EPS/XPS 断熱材のリサイクル技術を活用した循環型ビジネスモデル

 

■ セグメント別トレンド(9M 2024 推計)

自動車:欧州新車販売は回復基調だがタイヤ OEM 在庫調整が長期化。SSBR は北米・アジア向け輸出が牽引し数量微増。

建設・断熱材:住宅着工の落ち込みで EPS 売上は前年同期比 -8% 前後。価格競争激化によるスプレッド縮小が継続。

エネルギー・サービス:グループ内 CHP(熱電併給)転換に伴うガス・バイオマス電源稼働が寄与し、売上構成比を 12% へ拡大。

 

キャッシュフローと財務

・ CAPEX は 2024 年 12–13 億 PLN(売上比 13%)と高水準。主に合成ゴムの省エネ改修と廃棄 EPS 再資源化ライン。

・ フリーキャッシュフローは Fitch 想定でマイナス圏だが、2025 年には EBITDA 回復と投資ピークアウトで黒字転換見込み。

・ 有利子負債残高は 31 億 PLN 前後。格付は Fitch BB(アウトルック Negative)、Moody’s Ba2(安定的)。

 

■ 2025 年の注目ポイント

① 自動車タイヤ需要回復と高機能 SSBR 市場拡大

② 欧州住宅リフォーム需要に伴う EPS 断熱材の底入れ

③ SMR プロジェクトの EPC 契約締結と政府支援スキームの確定

④ 為替(PLN/EUR)とナフサ価格の推移

 

■ 投資家向けまとめ

Synthos は景気感応度が高い旧来型化学企業というイメージが強いが、

・ 高収益の高機能ゴム比率を引き上げ

・ 断熱材リサイクルと再エネで循環型モデルを強化

・ SMR などポーランド国内の次世代インフラ需要を取り込む

という変革を進めている。2024 通期決算が公表され次第、EBITDA モメンタムの回復度合いとレバレッジのピークアウトが確認できれば、株価のバリュエーション再評価余地は大きい。逆に欧州建設不況が長期化し EPS/XPS マージンがさらに圧迫されれば、レバレッジが 4 倍超へ再拡大するリスクは残る。4月24日の決算説明会での数字と 2025 年ガイダンスが短期の株価モメンタムを左右しそうだ。

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