■ 決算ハイライト
・売上高 22億7,000万ドル(前年同期比+6%、為替とカレンダー要因を除くベースでは+11%)
・宿泊・体験予約数 1億4,310万件(+8%)
・総予約額(GBV)245億ドル(+7%)
・平均宿泊単価(ADR)171ドル(▲1%、為替影響除くと+1%)
・純利益 1億5,400万ドル(純利益率7%、前年は12%)
・調整後EBITDA 4億1,700万ドル(18%マージン)
・フリーキャッシュフロー 18億ドル(FCFマージン78%)
・自社株買い 8億700万ドル(期末希薄化後株数は6億6,000万株)
■ 売上と収益性の動向
前年同期にあったうるう年の“2月29日”とイースターの時期ずれが今回の伸び率を約3ポイント押し下げ、為替も2ポイントの逆風となりました。それでも宿泊需要の底堅さが収益を押し上げ、売上は過去最高水準を更新。一方で純利益は株式報酬費用増と未上場投資の評価損が響き減益となっています。
■ 地域別トレンド
北米は低い一桁台の伸びにとどまったものの、ラテンアメリカは20%超、アジア太平洋は二桁半ばの伸びと地域分散が奏功。特にブラジルでは宿泊予約が前年同期比27%増と加速しました。またカナダ発の旅行は米国向けが減速し、メキシコへの予約が3月に27%増えるなど、旅行回廊の変化も顕著です。
■ コストと資本配分
営業費用ではプロダクト開発投資が増加し、販促費も前年を上回るペース。潤沢なキャッシュに支えられた自社株買いは過去12か月で35億ドルに達し、希薄化を抑えています。これにより期末の現金同等物・短期投資等は115億ドルを確保。
■ ガイダンスと成長戦略
・2025年4–6月期 売上高レンジ:29.9〜30.5億ドル(+9〜11%)
・Nights成長はやや減速、ADRは横ばいを想定
・年間調整後EBITDAマージンは少なくとも34.5%を維持
・新規事業開発へ2〜2.5億ドルを投下し、5月13日に「宿泊以外」サービスを正式発表予定
既存アプリを全面刷新し、迅速な機能追加を可能にするテックスタックを整備したことで、今後は「旅行中のサービス」へ収益源を拡大する計画です。
■ 市場の反応
決算発表翌日の時間外取引では株価が小幅上昇。5月2日現在の終値は124.01ドルとなり、年初来で堅調に推移しています(上のチャート参照)。高いキャッシュ創出力と自社株買いが下値を支えている一方、成長率鈍化と純利益減少への警戒感が上値を抑えています。
■ 投資家への示唆
レベニュー成長は一桁台半ばに減速したが、為替とカレンダー補正後は二桁成長を維持。旅行需要の総量が底堅い限り、プラットフォーム規模の経済は機能する。
2025年下期以降は「新サービス」投資が利益率を短期的に圧迫する見込み。市場はトップライン加速とサービス多角化の成果を注視。
規制リスクとSBC増によるEPS圧迫は継続的なディスカウント要因。特に主要都市の短期賃貸規制強化には警戒。
高水準のFCFと豊富な現金は資本配分の柔軟性を確保。自社株買い継続余地がバリュエーションの下支え。
中長期での注目ポイントは「宿泊以外」での収益多角化と、新興国需要の取り込みがどこまで売上加速に寄与できるか。総じて、成長鈍化局面でもキャッシュ創出力は際立ち、戦略投資フェーズへの移行タイミングとして押し目を狙う投資家には注目の決算と言えるでしょう。
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