【1 決算ハイライト】
・売上収益 7兆2,920億円(前年比 +5.5 %)
・税引前利益 6,956億円(+31.8 %)
・親会社株主帰属当期利益 5,619億円(+45.4 %)
・ROE 12.4 %(前期 9.4 %)
・フリーCF(営業CF-投資CF) +1,509億円で黒字継続
・1株当たり配当金は年間130円(中間65円・期末65円)を実施し、次期は140円へ増配予定
・自己株式3,500万株・800億円を上限とする新規買い戻しプログラムを発表
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【2 増益要因のポイント】
① 資産入替益の計上
北米タイヤ販売子会社マイダス社売却や国内不動産の売却益が寄与し、約200億円の一過性プラスを獲得。
② 資源価格と為替の好転
銅・アルミ価格の上昇により鉱山持分利益が改善。円安寄与を差し引いてもセグメント増益に貢献。
③ 持分法投資損益の大幅増
エチオピア通信事業やSCSKの増益に加え、前年のミャンマー通信事業引当・マダガスカルニッケル減損が剥落し、持分法利益は+1,046億円。
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【3 セグメント別レビュー(親会社株主帰属利益ベース)】
【鉄鋼】68.4 億円(▲0.8 億円)
北米石油管需要は鈍化したが、他地域の鋼材トレードが底堅く横ばい。
【自動車】51.2 億円(▲0.7 億円)
国内オートリースが安定推移。EV販売拡大への先行費用が増加。
【輸送機・建機】101.5 億円(+5.3 億円)
航空機・船舶リースが堅調。一方、建機ビジネスは需要鈍化と償却増で減益。
【都市総合開発】77.1 億円(+30.6 億円)
資産入替を加速し、国内外の住宅・物流案件売却益を計上。
【メディア・デジタル】45.2 億円(+46.3 億円)
T‑Gaia株式売却益のほか、JCOM等の安定収益が牽引。エチオピア通信の立ち上げコスト増は吸収。
【ライフスタイル】14.1 億円(+17.8 億円)
北米きのこ事業の改善と青果ビジネスの好調が寄与。
【鉱物資源】91.1 億円(+100.6 億円)
銅・アルミ価格の上昇と前年の減損剥落で急回復。
【化学ソリューション】21.4 億円(+5 億円)
医薬品・ペットケアが伸長。農薬は天候不順で伸び悩み。
【エネルギートランスフォーメーション】96.4 億円(+12.1 億円)
海外IPP/IWPPが安定、洋上風力支援船出資など再エネ投資を拡大。
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【4 財務健全性】
・総資産 11.63 兆円(前期比 +5 %)
・自己資本比率 40.0 %(▲0.3 pt)
・ネットDER 0.8倍を維持し、格付けA水準を確保
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【5 2025 年度見通し】
・親会社株主帰属当期利益 5,700 億円(+1.4 %、過去最高更新を計画)
・ROE 12 %水準を維持
・米国関税リスクなど外部不確実性に備え、400億円のバッファーを織り込み済み
・配当方針は累進配当を継続し、1株当たり140円を予想
・資本効率改善を目的に、800億円の自己株式取得を実施予定
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【6 投資家への視点】
●資産入替と株主還元の好循環
利益成長を確保しつつ配当増・自社株買いを並行させる資本政策は、総還元性向40 %以上を軸に中計2026の方針と整合。
●資源価格・為替感応度の高まりに注意
鉱物資源部門の利益回復はポジティブだが、価格反転時の下振れ余地も大きい。
●非資源分野の成長投資が次の評価軸
不動産開発、デジタルサービス、再エネ船舶支援など資源循環型案件が拡大中。これらが安定収益化すればバリュエーション改善余地。
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【まとめ】
2024 年度の住友商事は、資産入替による臨時利益と資源価格の追い風を原動力に、純利益を大幅に伸ばしROEを12 %台へ回復させた。株主還元強化を打ち出しつつも、次年度計画には関税リスクのバッファーを明示するなど保守的スタンスも維持している。資源サイクルへの感応度を低減し、都市開発・デジタル・再エネ分野で持続成長モデルを確立できるかが、株価の次なる評価ポイントとなろう。
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