USスチールを巡る買収騒動は、2025年4月20日現在、まだ「最終決着前の山場」に差し掛かっています。以下、これまでの流れと最新のステータスを時系列で整理します。
―― これまでの主な経緯
● 2023年12月 日本製鉄(以下、日鉄)がUSスチールを総額141億ドルで買収することで基本合意を公表。
● 2024年12月26日 規制審査の長期化を受け、クロージング予定を2025年1Qへ延期。
● 2025年1月3日 バイデン前大統領が「国家安全保障上の懸念」を理由に大統領令で買収を禁止。
● 2025年1月中旬 日鉄とUSスチールが大統領令の無効を求めて連邦地裁に提訴。
● 2025年3月27日 日鉄が開示を更新し、クロージング予定を「2025年2Q」に再度変更し、買収継続の方針を明言。
● 2025年4月7日 トランプ大統領が就任後初の大統領覚書を発出し、CFIUSに45日以内の「再審査」を指示。取引復活の余地が生まれ、USスチール株は急騰。
● 2025年4月14日 トランプ大統領は機内記者団に対し「USスチールは外国企業に支配されるべきでない」と改めて発言。市場では「投資は容認、支配権移転は難色」とのシグナルと受け止められる。
● 2025年4月17日 同大統領、日米関税交渉とのリンクを否定しつつも慎重姿勢を継続(ロイター報道)。
―― ステークホルダーの立場
・ 米鉄鋼労組(USW):一貫して買収反対。1月の禁止命令を歓迎し、6月18日までに完全撤回を求める姿勢。
・ 日鉄・USスチール経営陣:提訴とロビー活動を継続しつつ、追加投資や雇用維持を強調。
・ 投資家:再審査開始で買収成立確度がわずかに上昇したとの思惑から株価は4月上旬に一時13%高。
―― 現在の状況と今後のシナリオ
① CFIUSの再審査は4月7日から45日以内(目安は5月下旬)に大統領へ勧告書を提出。ここで (a) 買収承認、(b) 条件付き承認、(c) 再度却下 のいずれかが勧告される見通し。
② トランプ大統領は「外資支配回避」を繰り返しつつ、完全拒否とは言い切っておらず、「過半数未満出資」や「共同出資+技術投資」などハイブリッド案を模索しているとの観測が強い。
③ 6月18日までに取引を断念しない場合、バイデン時代の禁止命令との法的整合性を巡り追加訴訟が確実視される。
④ 労組と大統領選挙(2028年)を見据えた政治的取引材料化のリスクも大きく、最終決着にはさらに時間を要する可能性が高い。
―― 投資家への注意点
・ 審査の行方によっては株価が大きく変動し得るため、ヘッドラインリスクに留意。特に5月後半のCFIUS勧告公表タイミングは要警戒。
・ 万が一再度却下となれば、USスチールは代替的な資本提携や設備投資計画の見直しを迫られる見込み。反対に条件付き承認の場合は、日鉄側の追加投資負担が拡大するシナリオも想定される。
・ 為替(円高)の進行や米国の対中鉄鋼関税強化策との連動も、日鉄株・USスチール株のボラティリティ要因として意識したい。
要するに、「いまの段階では買収は“復活の芽”こそ出たものの、政治と労組の壁は依然として高く、決着はCFIUSの再勧告と大統領判断次第」というのが最新の姿です。
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