楽天グループ株式会社(以下、楽天)は、EC、フィンテック、モバイル事業を柱に成長を続ける日本の代表的なテクノロジー企業です。2024年度決算では、5期ぶりの通期黒字化を達成し、楽天モバイルの収益改善が進んでいることが話題になっています。今回は、楽天の最新決算を詳しく分析し、今後の成長戦略や市場でのポジションを解説します。
1. 楽天グループの概要
楽天は1997年に創業し、当初は「楽天市場」というECプラットフォームを中心に成長しました。その後、クレジットカード、銀行、証券、保険などのフィンテック事業を拡大し、近年では楽天モバイルを本格展開。多角化戦略によって、国内外で事業を拡大しています。
楽天のビジネスモデルの特徴は、**「楽天エコシステム」**と呼ばれる独自の経済圏です。ユーザーは、楽天市場で買い物をし、楽天カードで支払い、楽天銀行や楽天証券を利用することで、楽天ポイントを貯めることができます。このエコシステムが、楽天の競争優位性を支えています。
2. 2024年度の最新決算情報
楽天が2025年2月14日に発表した2024年度の通期決算は、以下のような結果となりました。
• 売上収益:2兆2,792億円(前年比+10.0%)
• IFRS営業利益:530億円(5期ぶりの黒字)
• 連結Non-GAAP営業利益:70億円
• 楽天モバイルEBITDA:2024年12月に単月黒字化達成
楽天の売上は28期連続で成長し、ついに黒字化を達成しました。特に楽天モバイルが2024年12月に単月EBITDA黒字化を果たしたことが、大きなトピックとなっています。
3. 増収・黒字化の背景を深掘り
(1) モバイル事業の損失縮小
楽天モバイルは、これまで巨額の設備投資と顧客獲得コストによる赤字が続いていました。しかし、2024年12月には単月EBITDA黒字化を達成。これは、基地局の設置完了による運用コストの低減と、契約者数の増加による収益拡大が背景にあります。
(2) フィンテック事業の堅調な成長
楽天カード、楽天銀行、楽天証券などのフィンテック事業は、引き続き安定成長を続けています。特に、楽天カードの取扱高が増加し、楽天証券の口座数も堅調に推移しています。
(3) EC事業の安定
楽天市場は競争が激化するものの、楽天ポイントプログラムの強みを活かして利用者数を維持。アマゾンやYahoo!ショッピングとの競争は厳しいですが、楽天スーパーセールや楽天ふるさと納税の好調が売上を支えています。
4. 楽天の株価動向
2025年2月14日時点での楽天の株価は1,023円で、前日比+1.09%の上昇。過去1年間の株価レンジは以下の通りです。
• 最高値:1,070円(2024年9月3日)
• 最安値:612円(2024年2月9日)
株価は、楽天モバイルの黒字化進展に対する期待から、2024年後半にかけて上昇しています。とはいえ、モバイル事業の本格的な黒字化が進まない限り、さらなる株価上昇には慎重な見方もあります。
5. 楽天の成長戦略
楽天は、今後以下の3つの柱で成長を目指します。
(1) モバイル事業の完全黒字化
楽天モバイルは、2025年度には通期EBITDA黒字化を目標としています。設備投資が一巡したことで、収益性が改善し、携帯キャリアとしての地位確立が進められています。
(2) フィンテックのさらなる拡大
楽天カードの取扱高増加や、楽天銀行の預金残高増加を通じて、金融事業の拡大を続けます。また、楽天証券と三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)との提携も、顧客基盤拡大の鍵となりそうです。
(3) ECと広告事業の強化
楽天市場の成長だけでなく、楽天グループ全体のデータ活用による広告ビジネスの拡大も視野に入れています。ECとフィンテックを組み合わせたマーケティング施策が成長ドライバーとなります。
6. 市場でのポジションと課題
楽天は、EC、フィンテック、モバイルの3本柱で成長を続けていますが、課題も少なくありません。
(1) モバイル事業の競争
楽天モバイルは黒字化の道を進んでいるものの、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった大手キャリアとの競争は依然として厳しい状況です。楽天の低価格戦略がどこまでユーザー獲得につながるかがカギとなります。
(2) フィンテックの規制リスク
フィンテック事業は好調ですが、金融規制の影響を受けやすいというリスクもあります。特に楽天銀行の上場後、規制環境の変化がどう影響するかは注視が必要です。
7. 今後の展望
楽天は、**「モバイル事業の完全黒字化」**を2025年度の大きな目標としています。これが達成されれば、グループ全体の利益体質が大幅に改善し、株価にも大きな影響を与えるでしょう。
また、楽天のビジネスモデルは、**「楽天経済圏」**の強みを活かしたクロスセル(顧客に複数のサービスを利用してもらう仕組み)にあります。モバイル事業とフィンテック、ECを連携させることで、他の競合とは異なる成長戦略を展開していくでしょう。
8. まとめ
楽天グループは、売上28期連続成長&5期ぶりの黒字化という成果を出しました。特に、楽天モバイルの黒字化が進みつつあることが、今後の成長を占う上で重要なポイントになります。
今後も楽天の**「モバイル×フィンテック×EC」のシナジー**がどのように進化していくのか、引き続き注目していきたいところです。
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