#289 「WOWOWの進化と挑戦:配信時代における成長戦略と財務分析」

WOWOW株式会社(証券コード:4839)は、日本初の民間衛星放送局として1991年に開局し、映画、スポーツ、音楽など多彩なコンテンツを提供しています。近年は、配信サービスとの競争激化や視聴者の多様化に対応するため、事業構造の改革や新サービスの展開に注力しています。

f:id:EuropeSoccerOjisan:20250113150118j:image

2025年3月期第2四半期決算概要

 

2024年10月31日に発表された2025年3月期第2四半期決算によれば、売上高は373億61百万円で前年同期比7億47百万円の増収、経常利益は16億5百万円で前年同期比1億37百万円の増益となりました。増収の主な要因は、映画事業や番組販売の収入増加、グループ会社の売上増加などです。一方、特別損失として17億70百万円を計上しており、これは4Kチャンネル「WOWOW 4K」の放送サービス終了やコンテンツ情報統合管理システムの開発中止による減損損失が主な要因です。その結果、中間純利益は9億円の減益となりました。

 

加入者動向

 

新規加入件数は36万3千件、解約件数は42万9千件で、正味加入件数は6万6千件の純減となりました。累計正味加入件数は240万1千件で、前年同期比7万4千件の減少です。ただし、前年同期より1万8千件の改善が見られ、特に4月に開始した新サービス「WOWSPO」が若年層の新規加入を促進するなど、改善の兆しが見られます。

 

成長戦略と財務戦略

 

WOWOWは「資本コストと株価を意識した経営実現に向けた対応」として、以下の取り組みを進めています。

• 成長戦略: メディア・サービスの構造改革として、不採算事業からの撤退を決定し、2025年2月28日に4Kチャンネル「WOWOW 4K」の放送サービスを終了します。また、コンテンツを軸に多層サービスの開発提供を推進し、新たな収益源の創出を目指しています。

• 財務戦略: 政策保有株式の縮減を進め、資本効率の向上を図っています。具体的には、保有する上場有価証券1銘柄の売却を決定しました。さらに、有利子負債の活用も視野に入れた投資の推進として、連結子会社の株式会社WOWOWコミュニケーションズが株式会社cinraの全株式を取得し、デジタルマーケティング分野での成長を目指しています。

 

株価の推移

 

2025年1月12日時点でのWOWOWの株価は989円となっています。過去1年間の株価は、配信サービスとの競争激化や業績の変動などの影響を受け、概ね900円から1,100円の範囲で推移しています。特に、2024年10月の第2四半期決算発表後には、一時的な下落が見られましたが、その後は安定した動きを示しています。

f:id:EuropeSoccerOjisan:20250113150127j:image

今後の展望

 

WOWOWは、厳しい競争環境の中で収益力の強化を図るため、以下の取り組みを進めています。

• 新サービスの展開: スポーツコンテンツを視聴できる新サービス「WOWSPO」を開始し、若年層の新規加入を促進しています。また、オリジナルコンテンツの海外展開や国際共同制作によるコンテンツ開発を推進し、収益の多層化を目指しています。

• コスト構造の見直し: 不採算事業からの撤退や業務効率化を進め、コスト削減と生産性向上を図っています。特に、4Kチャンネルの放送終了やシステム開発の中止など、選択と集中を進めています。

• 株主還元: 減収減益の状況下においても、安定的な配当を継続する方針を示しており、2024年度の配当計画は1株当たり30円を予定しています。

 

これらの取り組みにより、WOWOWは中長期的な成長と株主価値の向上を目指しています。特に、コンテンツの多層展開や新規サービスの開発を通じて、新たな収益源の確保と競争力の強化を図ることが期待されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました