#613 Emerson Electric Co.(NYSE: EMR)

概要

Emerson Electric Co.(NYSE: EMR)は2025年3月期第2四半期(2025年1月~3月)決算を2025年5月7日に発表しました。売上高は前年同期比1%増の44.32億ドル、調整後1株当たり利益(Adjusted EPS)は前年同期比9%増の1.48ドルを計上し、市場予想を上回る結果となりました。また、純キャッシュフローや株主還元策の拡充など、堅調な業績と今後の成長余地を示す内容が確認されました。

 

 

 

財務ハイライト

 

 

 

売上高:44.32億ドル(前年同期44.76億ドル→1%増) 
基本売上高(Underlying Sales):2%増(為替・M&Aを除くベースで) 
Underlying Orders:4%増(コア需要の拡大を背景に) 
調整後セグメントEBITA:12.40億ドル(前年同期11.39億ドル→9%増)、マージンは28.0%(+200bps) 
GAAPベースEPS:0.86ドル(前年同期0.95ドル→9%減) 
Operating Cash Flow:8.25億ドル(前年同期7.33億ドル→13%増) 
Free Cash Flow:7.38億ドル(前年同期6.51億ドル→14%増) 

 

 

 

 

セグメント別動向

 

 

 

Emersonは「Intelligent Devices」「Software and Control」「Measurement & Analytical」「Discrete Automation」「Safety & Productivity」の主要5セグメントで構成されます。主力のIntelligent Devicesは売上高30.29億ドルで前年同期から横ばい、Control Systems & Software(Software and Control)が14.21億ドルと7%増加し成長を牽引しました。一方、Discrete Automationは6.15億ドル(3%減)、Safety & Productivityは3.39億ドル(7%減)と一部セグメントで下押し要因が見られます。これらの動向は、製造業の自動化需要増とともに、高付加価値ソフトウェアサービスへのシフトが加速していることを示唆しています。

 

 

 

キャッシュフローと財務体質

 

 

 

第2四半期累計で8.25億ドルの営業活動によるキャッシュフローを生み出し、前年同期の7.33億ドルから13%改善しました。フリーキャッシュフローも7.38億ドルと14%増加し、資本効率の向上が鮮明です。一方、貸借対照表では流動資産が86.27億ドル、流動負債が108.46億ドルとなり短期的なキャッシュポジションは縮小傾向ですが、純負債の増加はAspenTech買収関連の一時的要因と見られます。自己資本比率は45.9%程度を維持しており、依然として健全な財務基盤を保っています。

 

 

 

2025年度見通しのアップデート

 

 

 

EmersonはAspenTechの完全統合を踏まえ、2025年度の通期ガイダンスを引き上げました。売上高成長率は約4%(従来レンジ4.5~5.5%→約4%)を見込み、調整後EPSは5.90~6.05ドルと前年実績の5.10ドルを大きく上回る水準を示しています。営業キャッシュフロー見通しは35~36億ドル、フリーキャッシュフローは31~32億ドルと、堅調な事業運営が続く見込みです。また、株主還元策として約23億ドルを配当・自社株買いに充当予定であり、配当性向の維持と安定的なリターン提供を両立します。

 

 

 

投資判断と注目ポイント

 

 

 

この決算では、トップライン成長こそ控えめながら、高いマージン改善とキャッシュ創出力によって企業価値向上の方向性が明確になりました。特にソフトウェア・制御系の収益拡大と、AspenTech統合によるシナジー創出は今後の成長ドライバーとして期待できます。逆風要因としては、Safety & Productivityの販売低迷や、為替・原材料コスト変動リスクが挙げられます。投資家にとっては、安定した配当・自社株買いによる総還元率や、中長期的な構造改革の進捗に注目したいところです。今後の株価動向は、2025年度下期のオーダー動向および世界的な設備投資環境に大きく左右されるでしょう。

 

 

 

まとめ

 

 

 

Emerson Electricの2025年第2四半期は、堅調な利益成長とキャッシュフロー改善が際立った一方、売上面ではやや伸び悩みが見受けられました。AspenTech統合やソフトウェア・制御事業の強化によって中長期的な成長基盤は整いつつあり、今後の業績推移に対する期待感は高まります。株主還元を重視する姿勢も明確であり、配当再投資や株主還元策に魅力を感じる投資家にとっては引き続き注目すべき銘柄と言えそうです。今後数四半期のオーダー動向や為替動向に注視しつつ、中長期的な視点での評価を推奨します。

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