#54 「ENEOSと出光興産の最新決算を徹底比較:業績分析と今後の展望」

ENEOSホールディングス(以下、ENEOS)と出光興産は、日本の石油元売り業界を代表する企業です。両社の最新の決算報告を比較・分析し、その特徴と今後の展望について解説します。

 

売上高の比較

 

2024年3月期第1四半期において、ENEOSの売上高は約3.2兆円、出光興産は約1.8兆円となっています。 ENEOSの売上高は出光興産の約1.8倍に達しており、業界内での規模の大きさが際立っています。しかし、両社ともに前年同期比で減収となっており、これは主に原油価格の下落による石油製品販売価格の低下が影響しています。

 

営業利益と純利益の比較

 

営業利益では、ENEOSが約2.1倍の差をつけて出光興産を上回っています。しかし、純利益に関しては両社とも同水準となっています。両社ともに大幅な減益を記録しており、特に出光興産は前年同期比で80.8%の減益となっています。これは、原油価格の下落に伴う在庫評価影響の反転や輸出マージンの悪化が主な要因とされています。

 

利益率とROEの比較

 

利益率に関しては、両社ともに低水準で推移しています。これは、原油価格などの外部環境の影響を大きく受ける業界特性を反映しています。過去9年間の純利益率の推移を見ると、両社ともに同様の傾向を示しており、外部環境の変動が業績に直結していることがわかります。

 

財務状況の比較

 

資産合計や自己資本、現金、有利子負債の各項目で、ENEOSは出光興産を上回っています。特に、現金の比率がENEOSは資産合計の4.1%であるのに対し、出光興産は2.8%となっており、流動性の面で差が見られます。ただし、両社ともに棚卸資産の比率が高く、在庫評価損などによるPL(損益計算書)への影響には注意が必要です。

 

株価と配当の比較

 

PER(株価収益率)は、ENEOSが9.9倍、出光興産が10.1倍と、両社ともに割安の目安とされる15倍を下回っています。PBR(株価純資産倍率)は両社とも0.62倍で、PBR1倍割れの状態が続いています。配当利回りは、ENEOSが3.72%、出光興産が3.49%と、高配当銘柄としての魅力を持っています。ただし、出光興産は過去に減配の実績があり、配当の安定性という点ではENEOSが優位に立っています。

 

今後の展望と課題

 

両社ともに、原油価格の変動や国内燃料需要の減少など、外部環境の影響を大きく受ける業界に属しています。そのため、事業ポートフォリオ多角化や新規事業への投資が求められます。特に、再生可能エネルギーや次世代エネルギー分野での競争力強化が重要となるでしょう。また、製油所の効率化や統廃合を進め、コスト削減と競争力の強化を図ることが必要です。

 

まとめ

 

ENEOSと出光興産の最新の決算報告を比較すると、売上高や営業利益でENEOSが優位に立っていますが、純利益では両社ともに同水準となっています。利益率やROEの低さは、外部環境の影響を大きく受ける業界特性を反映しています。今後、両社はエネルギー転換や国内市場の縮小に対応するため、事業ポートフォリオの見直しや新規事業への投資を通じて、持続的な成長を目指すことが求められます。

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