#606 任天堂2025年3月期決算分析―減収減益ながら次期成長シナリオに注目

要約

2025年3月期(FY25)における任天堂の連結業績は、売上高が前年比30.3%減の1兆1,649億円、営業利益が46.6%減の2,825億円となり、減収減益基調となった。その主因は既存ハード「Nintendo Switch」のライフサイクル後期に伴うハード販売台数の落ち込みと為替差損の拡大。一方、2026年度(FY26)には新機種「Nintendo Switch 2」の本体1500万台・ソフト4500万本という強気の販売見通しを掲げ、売上高を63.1%増の1兆9,000億円、営業利益を13.3%増の3,200億円と予想している。今後は新機種の市場浸透とIP活用による収益回復シナリオに注目したい。 

 

1 連結業績サマリー

2025年3月期の連結業績は以下の通り。

 

売上高 1兆1,649億円(FY24比-30.3%、16,718億円→11,649億円)
営業利益 2,825億円(同-46.6%、5,289億円→2,825億円)
経常利益 3,723億円(同-45.3%、6,804億円→3,723億円)
当期純利益 2,788億円(同-43.2%、4,906億円→2,788億円)
営業利益率は24.3%となり、前年の31.6%から7.3ポイント低下した  。

 

 

2 セグメント別業績分析

 

ゲーム専用機事業(ハード+ソフト)売上高 1兆835億円(-30.9%)
モバイル・IP関連収入等 676億円(-27.0%)
その他(ライセンス料等) 137億円(+21.4%)
ハード・ソフトを含む主力事業が大幅減となる一方、ライセンス収入などのその他収入は増加しており、IPの多角展開が寄与している。 

 

 

3 為替影響と利益率動向

FY25中の為替差損は79億円発生し、営業外費用の増加につながった。また、為替レートは期末において1ドル=161.76円、1ユーロ=149.48円と円安が進行。これにより輸出企業としての為替利益機会はあるものの、外貨建て負債評価損の計上が利益率を押し下げた。利益率低下の主因は為替差損と製造原価分散の高止まりにもある。

 

4 次期業績予想と新機種「Nintendo Switch 2」販売見通し

任天堂はFY26業績予想として、

 

売上高 1兆9,000億円(+63.1%)
営業利益 3,200億円(+13.3%)
経常利益 3,800億円(+2.1%)
当期純利益 3,000億円(+7.6%)
を示した。また、6月5日発売予定の「Nintendo Switch 2」について、本体1500万台、ソフト4500万本の販売を見込んでおり、新世代機への期待が業績回復のカギを握る。 

 

 

5 今後の注目ポイント

・新機種投入後のハードライフサイクルと既存IPタイトルのロングセラー化戦略

・モバイル・IP関連の収益拡大余地(映画化やテーマパーク展開含む)

・グローバル市場における競争激化と価格戦略の適正化

・為替変動リスク管理と円安メリットの最適活用

これらを踏まえ、Switch 2のローンチ成功とIPマネタイズ強化が2026年度以降の持続的成長に向けた重要テーマとなろう。

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