企業概要
IHIは重工業を中核に、エネルギー、社会インフラ、航空・宇宙、防衛、環境プラント、ターボチャージャー、精密機械など多岐にわたる事業を展開する総合重機メーカー。2025年3月期で創業遡及135年目を迎え、国内外で大型プロジェクトを推進している。
決算概要
2025年3月期の全社受注高は1兆7,511億円(前期比27.2%増)、売上収益は1兆6,268億円(同23.0%増)と大幅に伸長した。営業利益は1,435億円(前期は△701億円の損失)、税引前利益は1,384億円、親会社帰属当期利益は1,127億円と黒字転換し、2期連続で過去最高益を更新した 。1株当たり当期利益は744.84円で、前年の△450.78円から大きく改善している。
セグメント別動向
・航空・宇宙・防衛:民間向け航空エンジンのスペアパーツ販売が堅調に拡大し、PW1100Gをはじめとする主力機種の出荷増加が収益を押し上げた。研究開発投資を継続しつつも、高利益率を維持。
・資源・エネルギー・環境:東南アジアを中心とした大型発電所プロジェクトが進捗し、複数案件が収益化した。為替面では円安が追い風となったが、構造改革費用を織り込んで利益確保を図った。
・社会インフラ・産業システム:国内外でのプラント建設案件が堅調に推移。メンテナンス・サービス収益も増加し、安定的なキャッシュ・フロー源として貢献している。
財務ハイライト
・売上総利益率は23.0%(前期10.9%)、営業利益率は8.8%(同△5.3ポイント)に回復 。
・キャッシュ・フロー:有形固定資産投資や研究開発投資を積極的に行う一方、フリーキャッシュ・フローは改善基調。バランスシートの強化が進行中。
・株主還元:年間配当を前期比20円増配の140円(中間70円/期末70円)に引き上げ、株主への利益還元姿勢を明確化した 。
今期見通しとリスク要因
2026年3月期の業績予想では、受注高1兆7,900億円、売上収益1兆6,500億円、営業利益1,500億円、親会社帰属当期利益1,200億円を見込む。配当は140円を維持予定 。一方、米国関税リスクや一部事業の構造改革費用、為替相場の変動といった外部要因には注意が必要。
投資家視点
過去2年間で赤字→最高益という劇的な回復を果たし、主要セグメントがいずれも黒字化・拡大基調にある点は評価に値する。特に航空エンジン事業は今後も高い収益性が期待できる。一方、構造改革の継続と外部環境リスクの管理が鍵となるため、中長期的にはキャッシュ・フローの安定性とROICの改善動向を注視したい。
まとめ
IHIは2025年3月期に過去最高益を更新し、事業ポートフォリオ全体で成長シナリオを描いている。今期は配当増も実現し、投資家還元を強化。米国市場の関税動向やプロジェクトリスクには留意しつつ、航空・宇宙やエネルギー分野の成長が今後も企業価値を牽引すると期待される。中長期の成長軌道を確認しながら、投資判断を行いたい。
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