【はじめに】
米国連邦準備制度理事会(FRB)は2025年5月7日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を現行の0.25%刻みで4.25~4.5%に据え置くことを決定した。これは3回連続の据え置きであり、市場ではインフレ抑制と景気支援のはざまでFRBが慎重姿勢を続けるとの見方が強い 。
【経済背景】
現在の米国経済は、一方で堅調な雇用市場と企業業績が続く一方、他方で貿易摩擦によるコスト上昇がインフレ圧力を高めるという二重リスクにさらされている。特に、トランプ政権が断続的に発動している輸入関税が、企業のコスト構造や消費者物価に与える影響が注目される 。さらに、2025年第1四半期には実質GDPが前期比マイナス0.3%と予想外の縮小を示し、景気後退懸念も高まっている。
【金利据え置きの決定内容】
声明文では、「経済見通しの不確実性が高まっている」ことを主因に挙げ、追加利上げの判断にはさらなるデータを必要としていると明記した。政策金利のレンジは従来どおり4.25~4.5%に据え置かれ、次回会合での再検討をうかがわせるにとどまった 。
【主要理由とFRBの見解】
FRB議長ジェローム・パウエル氏は記者会見で、輸入関税がもたらすインフレおよび雇用の双方へのリスクが上昇している点を強調した。現状では、消費者物価上昇率が当初の想定を上回る一方、雇用統計は底堅く推移しており、利上げと利下げのいずれを優先すべきか判断が難しいとの認識を示した 。このため、「データ依存的アプローチ」を維持し、状況の変化に応じて柔軟に対応する姿勢を鮮明にした。
【市場の反応】
発表直後、主要株価指数は小幅下落したが、その後FRBの忍耐強い姿勢を好感して反発。債券市場では長期金利が若干低下し、ドルは対主要通貨でわずかに上昇した。市場参加者の多くは、次の利上げは9月以降にずれ込むとの見通しを強めている 。一方、ステグフレーション(高インフレと景気停滞の同時発生)リスクを警戒する声も根強い。
【今後の見通し】
インフレ動向や貿易交渉の進展が鍵となる。特に米中間の対話が進展し関税引き下げが実現すれば、企業や消費者のコスト負担軽減が期待され、FRBが利上げに傾く可能性が高まる。一方、関税が維持・拡大された場合、物価上昇圧力が長期化し、FRBはさらなる利上げを余儀なくされるリスクがある。現時点では、FRBは「インフレ抑制」と「景気支援」のバランスを取りながら、今後数ヶ月の経済指標を注視する姿勢を崩さない見込みである 。
【まとめ】
今回の金利据え置き決定は、FRBがかかえる政策ジレンマを改めて浮き彫りにした。貿易政策や地政学リスクなど不確実要因が山積する中、今後も「データ次第」の姿勢が続くとみられる。投資家は、短期的な市場変動に振り回されることなく、FRB声明や経済指標を丁寧に読み解くことが求められるだろう。
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