2024年8月、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタール(以下、ACT)は、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)に対し、約7兆円規模の買収提案を行いました。 この提案は、セブン&アイの企業価値を著しく過小評価しているとして、同社は提案に応じない姿勢を示しました。
**ACTの狙いと背景**
ACTは、世界29カ国・地域で約1万6700店舗を展開するグローバル企業であり、特に北米市場で強い存在感を持っています。 しかし、アジア太平洋地域での市場シェアは1%未満と低く、同地域での事業拡大を目指しています。 セブン&アイはアジア市場で強固な地位を築いており、同社の買収によりACTはアジア市場への迅速な進出とシェア拡大を図ろうとしています。
**セブン&アイの対応と対抗策**
セブン&アイは、非中核事業の整理やコンビニ事業への集中を進めており、企業価値の向上を図っています。 しかし、市場からの評価が必ずしも高くない状況が続いており、ACTはこのタイミングを捉えて買収提案を行ったと考えられます。 また、セブン&アイは経営陣による自社株買収(MBO)を検討し、創業家や伊藤忠商事、三井住友銀行などからの資金調達を模索しています。
**専門家の見解**
専門家は、ACTが投資ファンドではなく同業他社であることから、「安く買いたたいて高く売るという目的ではないだろう」と指摘しています。 また、米資産運用会社アーチザン・パートナーズのインターナショナルバリューチームのベン・ヘリック氏は、セブン&アイの取締役会は「選択の余地が狭まる前にクシュタールと交渉することが非常に重要だ」と強調し、適正な価格での売却に努力する責務があると述べています。
**今後の展望**
ACTは、買収提案額を引き上げる可能性を示唆しており、今後も買収提案を強化し、交渉を加速させる可能性が高いと考えられます。 一方、セブン&アイは事業構造の再編や成長戦略の見直しを進めており、今後の動向に注目が集まっています。
アリマンタシォン・クシュタール(以下、ACT)は、カナダ・ケベック州ラヴァルに本社を置く、世界的なコンビニエンスストアおよびガソリンスタンドの運営企業です。1980年に創業し、現在では世界29カ国・地域で約1万6700店舗を展開しています。
**事業概要**
ACTは、主に以下のブランドで事業を展開しています。
– **クシュタール(Couche-Tard)**: カナダ・ケベック州を中心に展開する主力ブランド。
– **サークルK(Circle K)**: 2003年に買収し、現在では20カ国以上で約2,200店舗を展開するグローバルブランド。
– **インゴ(Ingo)**: スウェーデンとデンマークで約500店舗のガソリンスタンドを運営。
これらのブランドを通じて、コンビニエンスストア事業と道路輸送用燃料事業を展開しています。
**業績**
2024年度の売上高は692億ドル(約10兆3,800億円)で、前年の718億ドル(約10兆7,700億円)から減少しました。営業利益も38億ドル(約5,700億円)で、前年の42億ドル(約6,300億円)から減少しています。 地域別では、アメリカの売上高が全体の63.4%を占めており、主要市場となっています。
**成長戦略**
ACTは「10 For the Win Strategy」を掲げ、2028年までにサークルKを500店舗増やし、EBITDAを2023年の58億ドル(約8,700億円)から100億ドル(約1兆5,000億円)にすることを目標としています。 また、積極的なM&A戦略を展開しており、2024年にはセブン&アイ・ホールディングスに対して買収提案を行いました。
**企業理念**
ACTのビジョンは「利便性と機動性で世界から選ばれる目的地になること」であり、ミッションは「お客さまの毎日を少しでも楽にすること」です。また、以下の4つの価値観を重視しています。
– **ワンチーム(One Team)**: 同僚がより働きやすくなるよう協力し合うこと。
– **正しいことをする(Do the Right Thing)**: 正直かつ誠実に行動すること。
– **オーナーシップを持つ(Take Ownership)**: ビジネスを自分たちのものとして扱うこと。
– **勝つためにプレーする(Play to Win)**: 攻めの姿勢で挑戦すること。
これらの理念と価値観に基づき、ACTはグローバルな事業展開と成長を目指しています。
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