#656 ソフトバンクGが“守り”に入る理由:アーム追加売却観測と資産圧縮の行方

――2025年5月13日に4年ぶりの通期黒字(純利益1.1兆円)を計上したばかりのソフトバンクグループ(SBG)。その直後から「アーム株をさらに手放すのでは」といったEXIT観測が再燃しています。SBGは本当に“資産売却モード”へ転じたのか、背景と波及を整理します。

● なぜ今アームを売る?

― AIバブルでアーム株は上場来高値圏を維持し、SBG持分(約90%)の含み益は16兆円規模に達したと推計されます。

― CFOは「アーム株は担保にも売却にも使える選択肢だ」と3月のロックアップ解除前に発言。過度なマージンローン依存を避け、現金回収へ振る可能性をにおわせました。

― フィナマイズは「残り25%分を売れば、担保融資より大きな資金を即時確保できる」と指摘。SBGが次のAI投資へ備える布石との見方が浮上しています。

● 株主還元と財務改善のバランス

― 2020年の4.5兆円資産売却プログラムと同様、今回も自社株買い・債務削減の“二兎”を狙うシナリオが有力です。

― ビジョン・ファンド銘柄の上場延期や評価損を受け、SBGは既に上場株の売却・圧縮を進行中。Bloombergによれば「ビジョンファンドは上場保有株の多くを静かに処分してきた」と報じられています。

― ネットデット(金融負債-保有株評価額)は改善傾向にあるものの、円金利上昇とドル建て社債の繰上げ償還需要が重なる2025~27年に向け、流動性バッファーを厚くしたい狙いも見逃せません。

● AI・半導体銘柄への波及

― アーム株の追加放出は市場の需給悪化要因。短期的には“AI関連の一角”に利益確定の連鎖が広がるリスクがあります。

― 一方、SBGが調達資金を「次のArm」のような生成AI半導体スタートアップや、米国で推進中の超大型データセンター「Stargate」プロジェクトへ再投資すれば、関連サプライチェーン(電力インフラ・HPC向け部材株)に追い風が及ぶ可能性も。

― 国内投資家は、アームの需給変動とSBGの買い戻し余地(自己株買い)が東京市場全体のセンチメントに与える影響を注視する必要があります。

● 投資家が見るべきチェックポイント

1 公式IR資料で示されたアーム株担保融資残高と返済スケジュールの推移

2 次回決算(2025年8月予定)での自社株買い枠の有無

3 ビジョンファンド主要銘柄(Bytedance、Coupangなど)の追加売却・上場計画

4 SBG社債スプレッドの動き(円金利正常化フェーズでの負債コスト)

結論

SBGの“資産売却モード”は、単なる守りではなく「AIインフラ集約投資」へ資本を再配分する攻守一体の戦略と読むのが自然です。アーム株の一部放出が現実となれば、短期的な需給波乱を覚悟しつつ、SBGの新たな投資テーマと株主還元方針を同時に追う局面に入ります。

#ソフトバンクG #アーム株 #資産戦略 #AI投資

タイトルとURLをコピーしました