【はじめに】
生成AIブームの象徴であるNVIDIAは、2025年2月公表のFY25決算でデータセンター売上が前年比3倍と市場の期待を再加速させ、FY26 Q1には売上ガイダンス43 billion USDを提示しました。 しかし株価は年初から50%超の乱高下を繰り返し、機関投資家の持ち高調整や“AIユーフォリア”への警戒も顕在化しています。米国1月相場では通信・素材・金融など非AIセクターがアウトパフォームし、国際マネーが巨大IT一辺倒から“各論勝負”へ軸足を移す動きが見え始めました。
【脱AIに資金が向かう3つの理由】
・AI関連銘柄のバリュエーションはS&P500平均の2~3倍水準で、決算ブレ時の下落リスクが拡大
・DRAMや設備投資は2025年前半にピークアウト感が強まり、HBMを除くメモリ価格は小幅下落が続く見通し
・素材・部材など“地味系”はPBR1倍割れ銘柄が多く、ROE>資本コストの改善策が進むことでリレーティング余地が大きい
【注目5銘柄の横顔】
●ダイセル(4202)
23年度以降、航空・エレクトロニクス向けセルロース系樹脂が伸長。2025/3期ROE13.8%で株主資本コストを上回りながらPBR0.9倍、PER7倍と割安圏。
▶カタリスト:航空機用炭素繊維、EV電池部材の拡販/23年末に発表した1,000億円規模の自己株買い枠
●JSR(4185)
半導体フォトレジスト主力だが、2024年に非上場化して機動的M&Aを進行。2025/3期上期は売上1,977億円(+9%)、DS事業コア利益率23%と高収益 。
▶カタリスト:韓国MOR量産投資、22nm後工程向け量産ライン立ち上げ
●JFEスチール(5411)
減益決算ながら営業CF3,789億円を確保、平均PBR0.5倍台。造船・洋上風力モノパイル向け高級鋼板が進捗。
▶カタリスト:電炉投資(脱炭素対応)と洋上風力向け厚板の価格交渉
●三井化学(4183)
売上1.81兆円(+3.4%)、コア利益1,009億円(+4.9%)で増配150円。ライフ&モビリティが数量増、ICTソリューションは底打ち。Net D/E0.73倍で財務健全。
▶カタリスト:EU再生プラ法対応バイオマス樹脂の拡張、ポリウレタン高付加価値品
●太陽誘電(6976)
売上3,414億円(+5.8%)、営業益104億円(+15%)ながら円高と独禁法費用で純益減。MLCC稼働率は前期80%→今期85%へ上昇見通し。
▶カタリスト:車載・5G基地局向けハイキャップMLCC、市場シェア拡大
【“脱AI”ポートフォリオ構築のポイント】
・テーマETFが存在しにくい領域なので、個別株のバリュエーションと財務バッファーを要確認
・設備投資ピークイン後のフリーCF改善局面を狙う
・為替(円高局面)には化学・素材が相対優位、金利上昇局面では高配当の鉄鋼が配当取りで底堅い
・AIハード投資が一服しても、データセンター増設で銅線・高機能樹脂・精密コンデンサ需要は継続
【まとめ】
2025年後半の相場は「AI関連の二極化+資源・素材の復権」がコアシナリオです。AIブームの副産物として電力・素材・物流などサプライチェーン全体が再評価されるフェーズに入りつつあります。高成長ストーリーよりも、「資本コストを超える実質ROE」や「自社株買いによるPBR是正」に着目すれば、“半導体以外”でも十分なリターンポテンシャルは見込めるでしょう。本稿で挙げた5銘柄は、いずれも市場がAIに目を奪われがちな今だからこそ光る“脱AIの逆張り”候補です。
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