リード
4月30日に発表されたJR東海(9022)の2025年3月期決算は、売上高・純利益ともに過去最高を更新し、4年連続の増収増益となった。東海道新幹線の回復に加え、訪日需要や料金体系見直しが奏功した格好だ。本稿では主要指標の変化と背景、今後の注目点を整理する。必要に応じて投資判断の参考にしてほしい。
【1】決算ハイライト
・売上高:1兆8,318億円(前年比+7.1%)
・営業利益:7,028億円(同+15.7%)/営業利益率38.4%(2.9pt改善)
・経常利益:6,493億円(同+18.7%)
・親会社株主に帰属する当期純利益:4,584億円(同+19.3%)
売上・利益がともにコロナ禍前(2019年3月期)を上回り、コスト抑制と単価上昇が利益率を押し上げた。
【2】セグメント別動向
〈運輸〉
東海道新幹線・在来線ともに需要が戻り、旅客運輸収入は1兆4,325億円(同+6.7%)と過去最高を更新。値上げした「ジャパンレールパス」とグリーン車利用増が寄与した。
〈関連事業〉
ホテル・商業施設はインバウンド増で好調。流通収入や不動産収入を含めた「その他」も増収基調。
【3】コスト構造と利益率
営業費用の伸びは+2.4%にとどまり、エネルギー価格沈静化と運転本数最適化が奏功した。結果として営業利益率は38.4%へ上昇し、再び4割近い水準を確保。財務健全性を示す純有利子負債/EBITDA倍率は2.4倍まで改善した(当社試算)。
【4】財務・キャッシュフロー
・営業CF:8,217億円、投資CF:▲9,560億円(リニア中央新幹線建設で継続して巨額)
・中央新幹線建設債務は3兆円を維持し、長期設備投資負担は依然大きい。
・総資産は10兆3,233億円、自己資本比率45.1%へ微増。
【5】株主還元と資本政策
・年間配当は1株あたり32円を維持予定(実質据え置き)。
・発表当日に最大1,000億円規模の自己株式取得枠を決議し、資本効率改善を狙う。
【6】2026年3月期会社計画と注目点
・売上高1兆8,650億円(+1.8%)、営業利益6,670億円(▲5.1%)、純利益4,230億円(▲7.7%)と減益見込み。
・大阪・関西万博需要を取り込みつつも、人件費・減価償却費の増加を織り込む慎重シナリオ。
・中央新幹線の静岡工区は本格工事着手が視野に入りつつあり、工期遅延リスクと投資額の膨張が引き続き懸念材料。
まとめ
東海道新幹線の復調とインバウンド需要を背景に、JR東海はコロナ禍から完全回復を果たし、営業利益率も過去水準を回復した。一方、総額9兆円超にのぼる中央新幹線投資はキャッシュフローを圧迫し続ける構造的課題。2026年3月期は増収ながら減益見通しで、コスト高耐性と価格戦略が試される局面となる。中長期での投資判断には、①リニア建設の進捗と予算管理、②訪日需要の持続性、③シェア買戻しによる資本効率の改善度合いを注視したい。
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