#564 JR西日本 2025年3月期決算を読み解く ――インバウンド回復と北陸新幹線延伸を追い風に、利益は横ばいながら株主還元を強化――

【目次】

■1. 決算ハイライト

■2. セグメント別トレンド

■3. 財務体質とキャッシュ・フロー

■4. 株主還元策:配当と自社株買い

■5. 2026年3月期ガイダンスのポイント

■6. 投資視点からの評価

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■1. 決算ハイライト

 

 

 

 

連結業績(億円)

 

項目│2025/3期│前期比

 

営業収益│17,079│+4.5%

 

営業利益│1,801│+0.2%

 

経常利益│1,656│-1.0%

 

親会社帰属当期純利益│1,139│+15.4%

 

1株当たり利益(円)│240.08│+18%

 

 

 

インバウンド需要や北陸新幹線敦賀延伸)の開業効果で売上高は堅調に拡大。一方、人件費・エネルギーコスト増が利益を圧迫し、営業利益はほぼ横ばいにとどまりました。

 

■2. セグメント別トレンド

・モビリティ業(鉄道・バス)

 営業収益10,467億円(+6.1%)、営業利益1,225億円(+10.7%)。北陸新幹線の延伸と訪日客需要が牽引。

 

・流通業(駅ナカ小売・ホテル)

 収益2,082億円(+5.7%)、利益138億円(+5.8%)。外部提携店舗や「ヴィアイン」の稼働改善が寄与。

 

・不動産業

 収益2,326億円(+6.8%)、利益389億円(-12.5%)。大阪駅・広島駅の大型開発で販管費が一時増。

 

・旅行・地域ソリューション

 収益1,887億円(-8.4%)、利益11億円(-85.5%)。ワクチン関連特需の反動で大幅減益。

 

■3. 財務体質とキャッシュ・フロー

総資産3兆7,523億円(前期比▲277億円)、自己資本比率30.8%へ上昇。有利子負債の削減と利益留保で純資産は530億円増。営業CFは2,814億円、投資CF▲2,631億円と大型投資が続くものの、フリーCFは黒字を確保。

 

■4. 株主還元策:配当と自社株買い

・配当:年間84.5円(中間37円+期末47.5円)、配当性向35.2%(前年は142円※株式2分割前ベース)

・新規自社株買い:上限2,000万株(発行済みの4.2%)、総額500億円、取得期間5月7日~9月19日。取得株は9月末に全額消却予定。

配当増額に加え大規模な買い戻しを発表し、総還元性向は40%台後半に上昇見込み。

 

■5. 2026年3月期ガイダンスのポイント

会社計画は営業収益1兆8,200億円(+6.6%)、営業利益1,900億円(+5.5%)、純利益1,150億円(+0.9%)。大阪・関西万博による輸送需要、デジタル決済サービス「Wesmo!」開始、不動産・まちづくり事業の寄与を織り込む一方、コスト高と人材費上昇を保守的に見積もり。

 

■6. 投資視点からの評価

プラス材料

・インバウンド回復と万博で2026年3月期も増収基調

・自己株買いでEPSとROEの押し上げ効果

北陸新幹線延伸や大型再開発で中長期の収益源多様化

 

懸念材料

・エネルギー・人件費上昇で利益率は低位横ばい

・大型投資の継続によるフリーCFの張り付き

・自然災害・事故リスクへの資本的支出は引き続き高水準

 

評価

EV/EBITDAはコロナ前水準に近づきつつあり、株価には自社株買い期待が織り込まれやすい局面。短期的には還元策が下支えとなるが、中期的な利益成長には不動産開発案件の立ち上がりとコスト抑制の進捗が鍵となります。保守的な来期純利益ガイダンスを踏まえ、投資判断は「ニュートラル」。決算説明会での追加開示(運輸需要の月次トレンド、万博輸送計画詳細)を確認したい局面です。

 

以上がJR西日本の最新決算レビューです。

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