1 決算ハイライト
・売上高 2兆2,618億円(前年比+10.0%)
・営業利益 1,966億円(同▲5.4%)
・経常利益 2,000億円(同▲3.6%)
・当期純利益 1,530億円(同▲2.6%)
・営業利益率 8.7%(前年10.1%から低下)
・1株配当 50円→60円へ増配(配当性向18.4%)
・国際線収入 8,055億円と過去最高(欧州3路線の新規就航が寄与)
2 増収要因―訪日需要とネットワーク拡充
・円安と観光再開で訪日旅客が旺盛。北米・欧州向けレジャー需要も回復し、国際線旅客数と単価がともに上昇。
・12~2月に羽田―ミラノ、ストックホルム、イスタンブール線を開設。8月以降は羽田―ウィーン、成田―パース線も再開し、国際線ASKは前期比+12%。
・LCC「Peach」は関西―シンガポール線を開設、「AirJapan」もアジア近距離で機材3機体制へ。
3 減益要因―コストの先行計上と補助金剥落
・燃油サーチャージが落ち着く一方、整備費・人件費が2桁増。
・コロナ関連減免・補助金の縮小で営業利益を実質▲260億円押し下げ。
・整備遅延によるエンジン補償金は一部計上したが、25年度は限られたプラス効果。
4 セグメント別概況
航空事業(売上2兆587億円)
国際線旅客:収入+14%、旅客数+11%。欧州新路線と北米ビジネス需要が牽引。
国内線旅客:キャンペーンでレジャー需要喚起、収入+6%。
貨物:高付加価値商材強化で収入+5%。
航空関連事業:受託業務増で売上+13%だが、システム費用増で利益▲40%。
旅行事業:海外好調も国内低迷で売上▲6%、営業利益微減。
商社・その他:免税店好調で増収、空港設備保守も伸長。
5 財務・キャッシュフロー
・営業CF 3,730億円(前年4,206億円)
・投資CF ▲3,437億円(機材更新・貨物施設)
・フリーCFはほぼ均衡、水準高い現金同等物8,627億円で流動性に余裕。
・自己資本比率31.2%へ2pt改善。
6 2026年3月期ガイダンス
・売上高 2兆3,700億円(+4.8%)
・営業利益 1,850億円(▲5.9%)
・純利益 1,220億円(▲20.3%)
補助金減少を前提に慎重な利益計画。旅客需要・単価は高止まり想定。配当は60円維持。
7 投資ストーリーとリスクチェック
強み
・国際線プレミアムシートの回復と欧州新路線で売上規模を拡張
・LCC/中距離新ブランドの住み分けが進展し需要層の取り込みが多層化
懸念
・整備費・人件費インフレが続けば25年度の利益率改善は限定的
・大型機材更新(A350・787)の資本支出が重荷となり減価償却費増へ
・為替反転時の訪日需要鈍化リスク、燃油市況反騰リスク
8 結論
2025年3月期は「増収・減益」。コロナ後の需要回復フェーズは一巡し、コスト構造改革と補助金剥落の影響を吸収できるかが次年度の焦点。中期的には、欧州・アジア線の拡大とプレミアム需要の取り込みでトップラインは着実に伸長しそうだが、利益成長には燃油・人件費コントロールとLCC事業の黒字定着が不可欠。配当利回りは2%中盤と魅力度は中程度だが、NISA長期投資ではインバウンド関連の景気敏感プレーとしてポートフォリオ分散要員になり得る。
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