#624 DeNAが推進する360度フィードバック制度の革新とその効果

はじめに

近年、多様な価値観や働き方が求められる組織において、従来の上司評価だけでは見えにくい「社員一人ひとりの真の成長ポテンシャル」を可視化する手法が注目を集めています。DeNA株式会社はこの潮流を先取りし、360度フィードバック制度を本格活用することで、自社の人材育成と組織活性化に新たな風を吹き込んでいます。

 

1 背景:評価制度の課題とニーズ

多くの企業では評価者が上司のみであるため、職場の現場感やチーム内コミュニケーションの実態が反映されにくいという課題がありました。また、評価を受ける側も「誰がどんな視点でコメントしているのか」が不透明であるため、フィードバックを活用した具体的な成長計画につなげにくいという声が聞かれます。こうした状況では、社員の早期離職やモチベーション低下を招きやすく、組織としての一体感づくりにも支障をきたします。

 

DeNAの360度フィードバック制度の特徴

DeNAが導入した360度フィードバック制度は、上司評価に加え、同僚や部下からのコメントをもれなく収集し、多方面からの視点で評価を可視化することを最大の特徴としています。具体的には、オンラインプラットフォーム上で匿名性を担保しつつ、日頃のコミュニケーションやプロジェクトでの行動を振り返ったコメントを入力。これにより、被評価者は自分では気づきにくい強みや改善点を客観的に把握できるようになりました。

 

3 成長志向を重視した運用

DeNAでは、評価結果を単なる「成績表」として終わらせるのではなく、個人の成長志向を促すツールとして運用しています。評価コメントは「次にどのように伸ばすか」という視点で整理され、個別のアクションプランに落とし込まれます。たとえば、コミュニケーション力を評価された社員には具体的なロールプレイ研修やメンタリング制度を組み合わせ、継続的な成長支援を行います。これにより、社員自身が自らのキャリア開発に積極的に関与できる仕組みが構築されています。

 

4 早期離職防止への効果

360度フィードバック制度を導入したことで、DeNAでは早期離職率の低下という成果が現れています。多面的なフィードバックを受けることで、社員は「自分の貢献がきちんと認められている」という実感を得やすくなり、組織へのエンゲージメントが高まります。また、課題が明確になることで「こんな風に変わりたい」という成長意欲が湧き、離職の抑止につながると考えられます。

 

5 社員同士の信頼関係構築

制度運用を通じて生まれるもう一つの大きな効果は、社員同士の信頼関係の強化です。フィードバックを行う側も、相手の成長を本気で願い、建設的な意見を伝える経験を積むことで、人間関係の質が向上します。その結果、チームワークが深化し、よりオープンかつ協力的な職場文化が醸成されていきます。

 

おわりに

DeNAの360度フィードバック制度は、従来の評価手法の枠を超え、社員一人ひとりの成長ポテンシャルを多角的に可視化すると同時に、組織全体のエンゲージメントと信頼関係を高めるモデルとなっています。これからの企業にとって、評価制度はただのマネジメントツールではなく、人材育成と組織活性化を同時に実現する戦略的資産であると言えるでしょう。 DeNAの取り組みを参考に、自社に合った360度フィードバック制度の構築を検討してみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました