#555 丸紅(8002)2024年度決算レビュー ─ 過去2番目の高水準、非資源分野が最高益を更新

【はじめに】

総合商社大手の丸紅は 5 月 2 日に 2024 年度(2025 年3月期)決算を発表しました。純利益は前期比 6.7 % 増の 5,029 億円と、アナリスト予想(4,980 億円)を上回り過去2番目の高水準に到達しました。成長ドライバーとなった非資源分野の拡大、安定したキャッシュフロー創出、そして積極的な株主還元策がポイントです。

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【決算ハイライト】

・売上収益 7兆7,902 億円(+7.4 %)

・営業利益 2,723 億円(‑1.5 %)

・税引前利益 6,292 億円(+10.9 %)

・親会社株主に帰属する当期利益 5,029 億円(+6.7 %)

・1株当たり利益(EPS) 302.78 円

・営業CF 5,979 億円(+35 %)

・期末配当 1株 50 円(年間 95 円、+10 円)

数字はいずれも IFRS ベース、カッコ内は対前期増減率。

 

【セグメント別動向】

非資源分野(食料・アグリ、生活産業、輸送機・航空、インフラサービス等)の実態純利益は 3,230 億円と過去最高を更新。特に北米たまねぎ事業の好調と国内通信関連サービスの寄与が大きい一方、資源分野(エネルギー・化学品、金属)は資源価格調整により 1,180 億円と減益でした。それでも全体ではポートフォリオ分散が効き、利益体制は安定しています。

 

キャッシュフローと財務体質】

営業CFは6千億円超と過去最高。投資CFは 3,953 億円の支出ながら、営業CFで大半を賄い、フリーCFはプラスを維持しました。自己資本比率は 39.4 % と 0.6pt 改善し、ネットD/Eレシオも 0.58 倍へ低下。引き続き投資余力を確保しています。

 

【株主還元と資本政策】

年間配当は 10 円増配の 95 円、総還元性向は 31 %。さらに発行済み株式の 4.2 %(約 700 億円)を上限とする自己株取得を決定し、資本効率向上を打ち出しました。米バークシャー・ハサウェイによる保有比率拡大もあり、株主意識の高まりが見て取れます。

 

【2025 年度見通しと戦略】

会社側は純利益 5,100 億円、配当 100 円を計画。うち 300 億円は米国関税リスクなど “不測の損失バッファ” として織り込み、安全マージンを確保しています。投資計画は 5,700 億円を掲げ、再エネ・電力トレーディング、食料サプライチェーン、デジタルソリューション領域に重点を置く方針です。

 

【競合比較と投資視点】

同日発表の三井物産は純利益 8,200 億円、伊藤忠商事は 8,000 億円規模で伸長しましたが、総還元性向では丸紅の 40 % がほぼ横並び。投資キャッシュフローを伴う成長と株主還元のバランスが評価ポイントです。PBR 0.9 倍台、配当利回り 3.8 % 前後は同業平均をやや上回り、資源サイクル耐性と非資源成長の両立が株価の下支えとなりそうです。

 

【まとめ】

丸紅は非資源の強化によってポートフォリオを進化させ、安定的な利益とキャッシュフローを背景に増配・自己株買いを実施。2025 年度は関税リスクを織り込みつつも増益・増配計画を維持しており、中期的には総還元性向 40 % を掲げて株主価値向上へのコミットメントを示しました。資源価格に左右されにくい利益構造への転換が進む今、同社株は日本株ポートフォリオのディフェンシブかつインカム狙いの選択肢として注目されます。

 

(以上)

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