2025年3月の訪日客数は349万7,600人と月次ベースの過去最高を更新し、2019年同月を大幅に上回った。1〜3月累計でも1,053万人と、年初来で既にコロナ前ペースを凌駕している。
それにもかかわらず、空港運営・設備関連銘柄の株価は旅行・航空株ほど買われていない。“滑走路の裏側”に眠るバリューを整理する。
1.主役はターミナル運営:日本空港ビルデング
羽田のターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)は、国際線旅客数の力強い回復を背景に、24年度(25年3月期)営業収益2,699億円(前年比+24%)、営業利益385億円(同+30%)と2期連続の過去最高益を達成した。25年度も営業利益400億円を予想し、早くも中計目標を上方修正。免税店売上は952億円とコロナ前比で1割超増えた。
2.関空“完全復活”と大阪・関西万博
関西3空港(関空・伊丹・神戸)は24年度の国際線旅客便数が13万1,867便と19年度比101%へ。関空単体でも「万博イヤー」に向けた受け皿は整った。
大阪万博(25年4〜10月)と併せ、関空、伊丹の追加発着枠や商業エリア拡充が進む。運営主体の関西エアポートは非上場だが、設備投資の波は納入企業に広がる。
3.“地味インフラ”3ジャンルの投資妙味
(1)保安・ハンドリング:JALUX(2729)
手荷物検査機器や機内販売を手掛ける複合商社。羽田・成田でのリテール復調に加え、関空での免税店再開が利益ドライバー。配当性向50%超で株主還元も厚め。
(2)給油・エンジニアリング:日揮HD(1963)
海外プラントのイメージが強いが、国内空港向け航空燃料システムのEPC(設計・調達・建設)受注が増勢。SAF(持続可能な航空燃料)供給網整備でも国交省案件が見込まれる。
国際Eコマース貨物が急増し、羽田・成田のクロスボーダー拠点を拡張。貨物量は24年度にコロナ前比1.3倍となり、取り扱いフィーが増収に寄与。
4.統合型リゾート(IR)と再開発の長期オプション
大阪IRは25年春に着工、30年開業予定。運営主体MGMリゾーツ/オリックス連合は年間2,550万人の来場を見込む。空港アクセスの強化が不可欠で、関空の第2滑走路増強や、なにわ筋線開業(30年予定)が追い風となる。
さらに羽田イノベーションシティや成田第3ターミナル拡張など、全国で空港隣接型再開発が相次ぐ。
5.投資指標とリスク
・日本空港ビルデング:株価は22年安値から約1.9倍だが、PBR1.8倍、PER33倍と依然割安感は限定的。首都圏空港の“長期着陸料”引き上げが収益を圧迫するリスクに注意。
・JALUX:免税店依存度が高く、円高転換時の客単価低下が懸念材料。
・ロジスティード:CVS物流依存度が高く、同業他社との価格競争に留意。
まとめ
インバウンド急回復で空港関連銘柄は全般に業績トレンドが好転したものの、株価は依然“裏方”扱いで、旅行・航空主力株ほど織り込まれていない。25年の関西万博と30年の大阪IR開業をはじめ、空港を核とした再開発需要が長期テーマとなる今こそ、“滑走路の裏側”を丹念に選別したい。
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