#522 2025年3月期決算レビュー──豊田自動織機、売上4.1兆円で増収増益も来期は減益予想

概要

豊田自動織機(6201)の2025年3月期通期連結売上高は4兆0,849億円(前期比+6.6%)、営業利益2,216億円(+10.6%)、親会社株主帰属当期利益2,623億円(+14.7%)となり、産業車両や自動車部品の堅調な販売と円安効果でそろって過去最高を更新した。営業利益率は5.4%と0.2ポイント改善。もっとも、為替差損などでその他包括利益が▲9,381億円に膨らみ、資産合計は9兆4,034億円と前年から大きく減少、自己資本比率も52.2%へ低下した。 
セグメント別動向
売上高の内訳は産業車両2兆7,020億円(フォークリフト・倉庫システム)、自動車1兆1,650億円(コンプレッサー・車両OEM・エンジン)、繊維機械ほか3,179億円。産業車両が全体の66%を占め、北米・欧州での旺盛な物流投資と円安が追い風となった。一方、自動車部門は国内ディーゼルエンジン認証対応費用の増加で採算が悪化し、利益率が低下した。 
利益増減要因
増益の主因は (1) 為替レート(平均1ドル=145円、1ユーロ=157円)の円安寄与、(2) 産業車両販売単価の上昇、(3) ハイブリッド車向け電子機器の数量増。マイナス要因はエンジン国内認証関連費用・人件費・研究開発費の増加で、総額約300億円のコスト上振れとされる。研究開発費は1,354億円(売上高比3.3%)まで拡大した。 
キャッシュ・フローと財務
営業CFは1,716億円に大幅減少(前年4,436億円)し、在庫積み増しと売上債権増加が響いた。投資CFは▲434億円、財務CFは▲1,986億円。結果、現金同等物は3,785億円(▲24%)。有利子負債は増えたが、営業CF倍率は4.9倍で依然健全な水準にある。 
株主還元
年間配当は1株あたり280円へ40円増配し、配当性向32.7%。自己株取得分を含む総還元性向は約45%に達した。2026年3月期も年間280円を維持する方針。 
2026年3月期見通し
会社計画は売上高4兆円(▲2.1%)、営業利益1,800億円(▲18.8%)、当期利益2,400億円(▲8.5%)。前提為替は1ドル135円と円高に振れる想定で、エンジン認証・環境対応コストが継続。さらに、子会社アイチコーポレーション株式売却益約90億円を営業外で計上予定だが、本業の減益を補い切れない見込み。 
市場の反応
決算発表当日の2025年4月25日、株価は前日比+300円の13,225円(+2.32%)。PER16.6倍、PBR0.81倍、配当利回り2.1%とバリュエーションは同業比で割安感が残る。 
投資視点
強み
・世界首位のフォークリフト事業で安定したキャッシュ創出
・ハイブリッド/電動部品需要の中長期拡大余地
・円安メリットが業績に直結

 

 

リスク

・エンジン不正問題の追加コストとブランド毀損

・物流設備投資サイクル反転による産業車両需要減

円高局面での利益ボラティリティ

 

総論

2025年3月期は円安効果を最大限取り込み増収増益で着地したが、来期は為替前提の保守化と追加コストで減益に転じる計画。PBR0.8倍の資産割安感と実質3%近い総還元利回りは魅力的だが、エンジン認証問題の収束と産業車両市況の持続性を見極めるまでは押し目戦略が妥当だろう。

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