週間の値動き総括
2025年3月10日から14日にかけて、米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)と日本の日経平均株価は、米中貿易摩擦の激化や経済指標の発表を背景に大きく変動しました。週明けは日経平均が前週から反発して始まりましたが、その夜の米国株市場が急落したことで波乱の幕開けとなりました 。週の中盤にはインフレ指標の改善やウクライナ情勢の進展が下支えとなり、一部で下げ止まりの動きも見られました 。週末にかけては、売られ過ぎた反動から米国株が急反発し、それに伴い日経平均も持ち直して取引を終えました 。以下、日ごとの詳細な動きと背景を解説します。
日ごとの値動きと主要ニュース
• 3月10日(月): 前週末の米国株が自律反発して終えた流れを受け、東京市場の週明けは日経平均が反発スタートしました。終値は前週末比+141円の37,028円と、1日で37,000円台を回復しています。しかし、同日夜のニューヨーク市場では米政府の関税強硬策や政府機関閉鎖リスクへの懸念から売りが殺到し、ダウ平均は前週末比–890ドル(–2.1%)と急落しました 。ナスダック総合指数は–4%に迫る大幅安となり、ハイテク株が全面安となる展開でした 。トランプ米大統領が9日放送のインタビューで関税政策による景気後退の可能性を否定しなかったことも警戒材料となり 、投資家心理を示すVIX指数(恐怖指数)は昨年8月以来の高水準に急上昇しています 。また、この日はテスラ株が15%以上急落するなど個別銘柄にも波及し、全面的なリスクオフムードで取引を終えました 。
• 3月11日(火): 前日の米株急落を受け、東京市場でも朝方からリスク回避の売りが膨らみました。日経平均は一時1,000円超下落して昨年9月以来約半年ぶりに36,000円を割り込み、前場に取引時間中安値の35,987円を付けました 。米トランプ政権の高関税政策が景気後退を招くとの警戒感が売りを主導し、半導体など輸出関連株を中心に下げが目立ちました 。しかし、その後は米株先物が時間外取引で下げ渋ったことを好感し、押し目買いや空売りの買い戻しが入り始めます 。結局、日経平均の終値は前日比–235円の36,793円まで下げ幅を縮小し、後場は下げ渋る展開で終えました 。市場関係者からは「トランプ大統領が状況悪化時に関税緩和など株価対策に動くとの期待が後退し、投資家心理が悪化している」との指摘が聞かれ、併せて円高や国内金利上昇への懸念も相場の重荷となったとの見方が出ています 。一方で、この日の売買代金は東証プライム市場で5兆円超の大商いとなり、「投げ売りが出る一方で押し目買いも集中しており、目先的には底打ちのサイン」として出来高増加を強気材料視する声もありました 。米国市場ではこの日も貿易戦争激化への懸念が根強く、ダウ平均は続落して–478ドル安で引けています 。もっとも、ロシアとウクライナの高官協議で**「30日間の暫定停戦」に向けた進展**が伝わると、欧米市場で株価は下げ渋り、ウクライナ和平への期待が広がりました 。これを受けナスダック総合指数は下げ幅を縮小し、米株安もやや和らいだため、東京市場も後場は落ち着きを取り戻した形です 。
• 3月12日(水): 前日の米国市場では2月消費者物価指数(CPI)の伸び鈍化が好感され、S&P500指数が反発して取引を終えました 。インフレ指標が予想以上に弱含んだことで「利上げサイクルが行き過ぎない」との安心感が広がり、このところ続いていた株価下落に歯止めがかかった格好です 。ハイテク株への買い戻しが入り、ナスダック総合は+1%超上昇。一方でダウ平均は終日方向感に欠け、小幅安で5日続落となりました 。また、トランプ政権はこの日、主要貿易相手国に対し鉄鋼とアルミに25%の関税を発動し、直ちにEUやカナダが報復関税を表明する事態となりました 。貿易戦争激化への懸念は残るものの、物価上昇圧力の緩和から米連邦準備制度理事会(FRB)による年内追加利下げ期待も維持されています 。
東京市場の日経平均は、この米国株の動きを受けて小幅に反発しました。朝方は欧米株安の流れから売り優勢でしたが、前述のウクライナ暫定停戦合意の可能性が追い風となり、下げ渋る展開となりました 。結局、終値は前日比+25円の36,819円とわずかながらプラス圏を維持しています 。寄り付き直後に一時200円超下げる場面があったものの、先物主導で断続的に買いが入り相場全体を支えました 。この日は円相場がやや円安方向に振れたこともあり(1ドル=148円台)、自動車など輸出株に買い戻しが入ったほか、防衛関連株にも買いが集まり相場を下支えしました 。東証プライム市場では値上がり銘柄数が全体の7割に達し、幅広い銘柄が買われています 。もっとも上値追いの動きは限定的で、日経平均は狭いレンジでのもみ合いに終始しました 。
• 3月13日(木): 前日の米国市場では、ダウ平均が–82ドルと小幅続落した一方、ハイテク株主体のナスダック総合は+1%以上の上昇を見せました 。2月CPI鈍化を受けたハイテク株買いが継続し、投資家の間ではインフレ収束期待が高まったためです 。しかし、トランプ政権の高関税政策への不安は根強く、この日も米市場は不安定要因を抱えていました。また、トランプ大統領はEUに対し「米国産ウイスキーへの報復関税を撤回しなければ、EU産ワインなど全てのアルコール製品に200%の関税を課す」と発言し 、米欧間でも関税合戦が激化する懸念が浮上しました。これにより米景気後退やインフレ加速への警戒感が高まり、米長期国債に安全資産買いが入るなど、市場は神経質な動きとなっています 。
東京市場の日経平均は、朝方は前日の米ナスダック上昇を受けて買い先行となり、大きく上昇して始まりました。寄り付き直後には500円超高となり一時37,300円台まで上伸しましたが、その後は次第に伸び悩みます 。半導体関連株や防衛関連株が引き続き強く、市場を牽引しましたが 、後場に入ると日銀の植田総裁の発言をきっかけに相場の雰囲気が変化しました。植田総裁が「現在の日銀のマネタリーベースや当座預金残高はやや大きすぎる」と述べたことで金融緩和縮小観測が意識され、為替市場で**円高(対ドルで約0.4%の円価値上昇)**が進行 。これが重しとなって輸出株中心に上げ幅を消し、日経平均は結局前日比–29円(–0.08%)の36,790円と小反落で取引を終えました 。朝方の上昇分をほぼ吐き出した格好ですが、下値も底堅く推移しています。
• 3月14日(金): 前夜の米国市場では、**売られ過ぎ銘柄への買い戻し(バリュー買い)**が強まり主要株価指数が急反発しました 。この週ずっと市場を翻弄していたトランプ大統領の関税方針に進展が見られず不透明感は残ったものの、直近の株価急落でNYダウは過去最高値から10%超下落し調整局面に入っていたため 、「悪材料が解決しなくともテクニカルな自律反発が起きやすい水準」に達したとの指摘もあります 。実際この日は、大型ハイテク株7銘柄(いわゆる“マグニフィセント・セブン”)がそろって上昇し、ハイテク株がマーケットを牽引しました 。S&P500種株価指数とナスダック総合指数の上昇率は、昨年11月の米大統領選直後以来の大きさとなり、S&P500の全11セクターが揃って上昇する全面高となりました 。米投資家からは「株価が過去最高値から10%下落し売られ過ぎ水準なので、根本的な問題が未解決でもリバウンドの条件は整っていた」との声も聞かれます 。もっとも、この反発にもかかわらず主要株指数は週足では4週連続の下落となり、依然として調整トレンド下にあります 。週間を通じてみれば、2月のCPIと卸売物価指数(PPI)がインフレ鈍化を示唆したものの、市場はトランプ関税政策の二転三転に振り回されたと言えます 。個別ではEV大手テスラが上海工場で主力SUV「モデルY」の廉価版生産に乗り出すとの報道を受けて+3.9%上昇するなど、材料の出た銘柄にも買いが入りました 。
東京市場のこの日は、前日の米株急落(NYダウ–537ドルで昨年9月以来の安値圏 )を受けて朝方は売りが先行しました。寄り付き直後に日経平均は200円近く下落しましたが、その後は円安基調に支えられた買い戻しや値頃感からの押し目買いが優勢となり、次第に上げに転じます 。後場に入ると先物主導で上昇ピッチが上がり、最終的に日経平均は前日比+263円(+0.72%)高の37,053円で取引を終了しました 。これにより日経平均は約1か月ぶりに週間ベースでの上昇(前週末比+165円)を記録し、4週ぶりの反発となっています 。週初からの荒い値動きを乗り越え、37,000円台を回復して引けたことは市場心理の改善につながりました。
主要セクターの動向
今週は株式市場全体が大きく揺れ動きましたが、中でもテクノロジーセクターの変動が目立ちました。週初は金利上昇観測や円高によるキャリートレード巻き戻しもあってハイテク大型株への売り圧力が強く、S&P500情報技術セクター指数は4%超の急落に見舞われました 。特に米国市場ではグロース(成長)株が3月10日に–3.8%と2022年9月以来の大幅下落を記録し 、NASDAQ上場のハイテク銘柄が軒並み急落しました。半導体関連株の指標であるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)も週前半に大幅安となり、東京市場でもレーザーテックや東京エレクトロンなど半導体株の下げが目立っています 。しかし、週後半にはインフレ指標の改善で長期金利が低下したことからハイテク株に買い戻しが入り、米NASDAQは急反発 。東京市場でも半導体やハイテク株が買われ、14日にはアドバンテストなどが上昇に転じました 。総じてテクノロジーセクターは前半の急落と後半の急騰という乱高下の展開で、投資家の警戒感と期待感が交錯する形となりました。
金融セクターも同様に不安定な動きでした。景気後退懸念が高まる局面では銀行株を含む金融株に売りが出やすく、週初の米市場急落時にはゴールドマン・サックスなど大型銀行株も下落したとみられます。米10年国債利回りは3月13日に4.28%まで低下する場面があり 、長短金利差の縮小による銀行収益圧迫懸念も意識されました。一方で、金融株は相対的にディフェンシブ性も持つためハイテクほどの乱高下には至らず、S&P金融株指数の下げ幅はS&P情報技術指数に比べ限定的だった模様です(週初のS&P金融は–2%、情報技術は–4%以上 )。東京市場でもメガバンクなど金融株は週前半に軟調でしたが、金利低下や景気不安の高まりからディフェンシブな買いも入り、野村ホールディングスなど証券株も下げ渋りました 。週末に米国株が反発すると金融セクターも持ち直し、米大手銀株や保険株は揃って上昇に転じています 。
エネルギーセクターでは、週前半の景気後退懸念に伴う原油需要減退観測から原油価格が下押し圧力を受けました。実際、米WTI原油先物価格は3月11日時点で1バレル=66ドル台半ばにまで下落し 、エネルギー関連株も軟調でした。しかしその後、米ドルがやや下落したこともあって原油は割安感から小幅反発に転じ 、エネルギー株も底堅さを見せました。米エネルギー大手のエクソンモービルやシェブロンは週末にかけて株価を持ち直し、S&P500のエネルギーセクター指数も14日には全11セクター中で2番目の上昇率となる+2%近い上げを記録しています 。もっとも、原油相場自体は一進一退で、景気減速懸念が完全に払拭されたわけではないため、エネルギー株は他セクターに比べ上値の重い展開でした。
加えて、日本市場固有の動きとして防衛関連セクターの上昇が目立ちました。ウクライナ情勢や国内の防衛予算拡大の思惑から、石川製作所など防衛株が連日買われ 、相場全体の下支え役となっています。これらはテーマ性の強い物色ですが、需給主導で相場の浮揚材料になりました。
米国市場と日本市場の相関関係
今週は米国市場と日本市場が高い相関性を持って動いた一週間でした。米国株の大幅下落はタイムラグをもって翌日の東京市場に波及し、米国発のショックが日本株を押し下げる場面が何度も見られました。実際、週初のNYダウ急落(–890ドル)は翌3月11日の東京市場での日経平均一時–1,000円超安という形で反映されています 。逆に米国株の好転は日本市場の投資家心理を改善させ、米ナスダック反発となった3月13日には東京市場でもハイテク株中心に買い戻しが入りました 。このように**「米国発の流れを東京市場が翌日引き継ぐ」**構図が顕著で、特に米株先物の動きが東京市場の日中値動きに影響を与えるケースも多くみられました。例えば11日には、東京市場の後場に米株先物が堅調に推移したことを手掛かりに日経平均が下げ幅を急速に縮小しています 。
相関関係の背景には、投資家のリスクセンチメントがグローバルに連動していることがあります。米国株が急落する局面では世界的にリスクオフの動きが広がりやすく、日本市場でも海外投資家主体に先物売りが出て株価が押し下げられました 。また為替相場を通じた連鎖も無視できません。米株安局面では安全資産とされる円が買われ(円高傾向) 、輸出依存度の高い日本企業の収益見通しにマイナスとなるため日本株に追加の下押し圧力がかかります 。一方、米株反発局面ではリスク選好度の回復から円安方向に振れ、日本株のサポート材料となりました 。実際に週末の東京市場では、円安基調(ドル円148円台)を好感した買いが入って日経平均の上昇を後押ししています 。
もっとも、日本市場固有の要因が顕在化した場面では、一時的に米国市場と異なる動きを見せることもあります。例えば13日には、米NASDAQが上昇した流れで東京市場も朝方は上昇しましたが、日銀総裁の金融政策に関する発言という国内要因で後場に失速し、米株高の恩恵を十分には引き切れませんでした 。このように日本市場は米国の影響を強く受けつつも、為替や国内政策要因で微調整される動きとなっています。総じて今週は、米国と日本の株式市場が「政策不安」という共通材料で結びつき、高い相関をもって推移したといえるでしょう。
経済指標と市場への影響
今週発表された主要な経済指標も株価に大きな影響を与えました。米国ではまず3月7日(金)に2月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数の増加幅が+15.1万人と市場予想(約16万人)をわずかに下回る結果となりました 。失業率も4.1%へと前月から上昇し、労働市場に若干の軟化が見られたことで、市場では「景気過熱が和らぎつつある」との見方が浮上しました。この雇用統計を受け、前週末の米株式市場では一時400ドル超の下げが進みましたが、その分割安感が意識されて押し目買いにつながり、ダウ平均は下げ幅を縮小して終えています 。しかし、週明け以降はトランプ政権の通商政策リスクが雇用指標の影響を上回り、雇用統計自体の株価への波及は限定的となりました。
一方、インフレ指標の影響はより直接的でした。3月12日発表の米国2月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.8%と、1月の+3.0%から伸びが鈍化し市場予想(+2.9%)も下回りました 。物価上昇圧力の低下が確認されたことで、FRBが年内に追加利下げに動く余地があるとの期待が維持され、これが株式市場の下支え材料になりました 。実際、この日S&P500指数とナスダック指数の下落トレンドが止まり反発に転じたのは予想下振れのCPIが契機でした 。翌13日には卸売物価指数(PPI)も公表され、こちらも前年同月比の伸び率が市場予想を下回ったと伝えられ、インフレ鈍化傾向がより鮮明になっています 。
日本に目を転じると、為替相場と金融政策に関連した材料が注目されました。週央の13日、植田日銀総裁が国会で金融緩和縮小を示唆するような発言を行った際には、市場が即座に反応して円高・株安に振れました 。この発言自体は「現状の日銀の資産規模はやや大きすぎる」との指摘で、具体的な金融政策変更を意味するものではありませんでしたが、市場は将来の金融引き締め観測に敏感に反応した形です 。結果的にこの日の日本株は上げ幅を失う展開となり、国内金融政策の一端が短期的な株価変動をもたらしたと言えます。
総括すると、CPIやPPIといったインフレ指標の改善は本来株式市場に追い風でしたが、同時期に噴出した通商政策リスクがそれを相殺する格好となりました 。雇用環境も堅調さを保ちつつやや成長ペースが緩まり、景気は減速局面への入り口に差し掛かっているとの見方が強まっています。このため金融当局のスタンスにも変化が予想され、投資家は米FRBの次回FOMC(3月下旬)や日銀の金融政策決定会合の動向にも神経を尖らせています。実際、来週3月19〜20日のFOMCではFRBが政策金利据え置きに転じるとの見方や、状況次第では年内利下げの示唆が出る可能性も取り沙汰されており、これが金利敏感なハイテク株や金融株の動向を左右するでしょう。また、米中貿易問題の行方やウクライナ停戦協議の進展などマクロ要因も引き続き市場心理を揺さぶる要因となる見込みです。
投資家へのアドバイスと今後の展望
今週の相場は米国と日本で高ボラティリティの荒い展開となりました。トランプ政権の関税方針が日替わりで報道され、ウクライナ情勢や国内政策発言も加わったことで、市場は良材料と悪材料に振り回された格好です 。投資家にとっては神経質な値動きが続きましたが、こうした調整局面では冷静な対応が求められます。まず重要なのは、短期的なニュースに過度に翻弄されないことです。例えば関税を巡る発言に市場が過剰反応して急落した場面では、実体経済への影響や政策の落とし所を見極める冷静さが必要です。実際、週末には悲観一色だった相場が一転して急反発しており、売り急いだ投資家が買い戻す展開となりました 。根本的な問題(貿易摩擦など)が解決していなくても、テクニカルな自律反発が起こり得ることを今回の相場は示しています 。
ポートフォリオ戦略としては、引き続き分散投資とヘッジ手段の活用が有効です。株式市場のボラティリティ上昇局面では債券や金など安全資産が相対的に買われる傾向が見られたため(米10年債利回り低下、金先物価格上昇 )、一部資金をこれら資産にシフトしてリスク分散を図ることも検討に値します。また、為替変動リスクにも注意が必要です。円高が進行すれば日本の輸出企業には逆風となりますが、一方で輸入物価の低下を通じて国内インフレ圧力を和らげる利点もあります。したがって為替の動きに応じて外貨建て資産と円貨資産のバランスを調整することも有効でしょう。
今後の展望としては、まず米通商政策の行方が最大のカギとなります。市場では「さすがに景気に悪影響が及べば政策修正もあり得る」との期待も残っていましたが、今週時点ではその期待が後退したことで相場が不安定化しました 。しかしトランプ大統領は株価動向にも敏感とされるため、今後株価が大きく崩れるようであれば何らかの融和的なメッセージが出てくる可能性も否定できません。仮に貿易摩擦懸念が和らげば、企業業績のファンダメンタルズは依然堅調な部分もあり、株価は急速に正常化する余地があります。
一方で、景気後退リスクにも備えておく必要があります。仮に関税引き上げが相次ぎ貿易戦争が激化すれば、企業のサプライチェーン混乱やコスト増大から実体経済に下押し圧力がかかり、米国のみならず世界経済が減速する可能性があります。JPモルガンの試算では、各国が報復し合う関税合戦に発展した場合、米国の景気後退確率は50%超に高まるとの指摘もあります 。このような最悪シナリオも視野に入れ、株式市場が弱気相場入り(高値から20%以上下落)する可能性もゼロではありません 。従って、投資家は楽観・悲観双方のシナリオを念頭に置き、急変動にも対応できる資金管理を心掛けるべきでしょう。
最後に、長期的視点を維持することも重要です。短期の乱高下に惑わされず、各企業の収益動向や経済の基調を見極めながら投資判断を行う姿勢が求められます。足元ではインフレが確実に鈍化基調に入っており、中央銀行の引き締め余地も限られつつあります 。金利環境の安定はハイテク株や成長株にとって追い風となりますし、原油安は素材・運輸など他セクターにも恩恵となります。日本企業も為替や資源価格の安定が業績改善につながりやすい局面です。従って、短期的なボラティリティは高いものの、中長期的には悲観しすぎず基本シナリオを踏まえた投資を続けることが肝要です。
総じて、2025年3月第二週の市場は**「警戒と安心の綱引き」**となりました。投資家は引き続き米国発のニュースフローに注意を払いながら、日本固有の要因(為替や政策)にも目配りする必要があります。適切なリスク管理の下で冷静に対処すれば、ボラティリティ相場の中にも次の投資チャンスが見いだせるでしょう。今後も関税交渉の行方や経済指標の結果に一喜一憂する展開が予想されますが、大局を見失わずに臨むことが求められます。市場が安定を取り戻すにはいくつか乗り越えるべき課題がありますが、インフレ鎮静化という明るい材料も出始めています 。慎重かつ機動的な投資戦略で、この不透明な相場を乗り切っていきたいところです。
Sources: ダウ平均・日経平均の市場動向(ロイター) ; 日経平均株価・東京市場の分析(ロイター/株探) ; 米経済指標(ロイター) ; その他市場データ など。
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