◆ 市況逆風でも増収増益
資源価格が一服し、鉱山機械の大型案件は足踏み。それでもコマツの2025年3月期は売上高4兆1,044億円(前年同期比+6.2%)、営業利益6,571億円(同+8.2%)と堅調だ。営業利益率は16%へ上昇し、円安や価格改定が奏功した。
◆ 成長ドライバーは“スマートコンストラクション”
ドローンで取得した3D地形データをクラウドに集約し、AIで不要物を自動除去。ICT建機へ施工データを即時配信することで、測量・設計・施工をワンストップ化する。最新の「Smart Construction Remote」は非コマツ機にも接続でき、現場外から設計ファイルを送信可能だ。
◆ “生成AI×建機”で現場の見える化
スマートコンストラクションのエッジ進化版では生成AIを活用し、ドローン画像から重機・建物を自動認識して地形モデルを高速生成。測量後の手直しが不要になり、施工前準備を最大50%短縮する。
◆ PERとROICが示す“本当の実力”
・株価バリュエーション:ADRベースのP/Eは約10倍で、世界の建機大手平均(約14倍)を下回る。
・資本効率:ROICは9.3%と過去10年の中央値(8〜10%)の上限付近。金利上昇局面でも資本コストを上回る水準を維持している。
◆ 中期経営計画の打ち手
2025〜27年度はフリーキャッシュフロー累計1兆円を掲げ、生成AIと自律化建機に重点投資。ROE10%超を死守しつつ、株主還元は総還元性向50%目標。
◆ 投資視点:買い材料とリスク
・買い材料
― スマートコンストラクションの高粗利ビジネスモデル
― 自律施工と遠隔操作によるリカーリング収益の拡大余地
・リスク
― 鉱山投資サイクル鈍化による高単価機種の失速
― 建機IoT市場への新興プレイヤー参入
◆ まとめ
資源関連の追い風が弱まっても、コマツはAIとDXを軸に“現場そのもの”をプラットフォーム化し、利益率を底上げしている。PER10倍台前半の評価は、生成AIによる追加マージンを織り込み切れていない。長期視点での収益構造転換をどう評価するかが投資判断の分水嶺となるだろう。
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