#633 スマートニュース+が描くメディアの次章──有料ニュースとクーポン連動で変わる情報消費

【はじめに】

2023年12月12日に正式スタートした「SmartNews+(スマートニュースプラス)」は、有料ビジネスニュースと300種類の店舗クーポンを月額1,480円で束ねたサブスクリプションです。国内外25超のメディアを読み放題にし、初月無料・月額980円の導入キャンペーンで注目を集めました。

 

【サービスの進化】

・提携メディアは現在58社に拡大し、東洋経済オンラインやMIT Technology Reviewなど分野横断のラインアップを追加。

スマホ向けだった有料記事は2025年4月末にブラウザ版が公開され、職場PCでも読めるマルチデバイス体験へ。

・Web版公開を記念し、5月9日正午まで月額980円の割引を実施。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【ユーザーエクスペリエンスの革新】

・AIサマリーが30秒要約を提供し、「タイパ」重視の読者を取り込む。

・グラフィックニュースで市場データや企業分析を図解、スクロールするだけで情報を俯瞰できる。

・毎月付与される500円相当の特典クーポンと常時使える300種類の割引により、情報収集と消費行動を直結させている。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【ビジネスモデルへの示唆】

 

媒体社に新たな収益窓口
 従来は個別課金か広告モデルに頼っていた有料記事が、バンドル型サブスクで追加リーチを獲得。SmartNewsは収益シェアを通じて媒体社へ定期収入を戻しつつ、独自のAI加工・UIで付加価値を上乗せしている。
クーポンとのクロスセル効果
 読了後に「お得体験」が控えることで、継続率を高める仕組み。利用行動データはO2O(Online to Offline)マーケティング資産となり、飲食・小売企業は広告出稿よりも直接的な送客を得られる。
「媒体×小売」連合の国内事例
 Apple News+やLINE VOOMとは異なり、ニュースとクーポンを同一料金に組み込んだ点が日本市場の空白を突いたポジショニングと言える。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【課題と展望】

・ニュースサブスク市場はApple News+、NewsPicksプレミアムなど競争が激化。独自記事の拡充と価格競争力の維持が必須。

・クーポン価値が利用額を上回る「お得感」が薄れると、離脱リスクが高まるため、提携チェーン拡大と特典更新サイクルが鍵。

・海外版との連携や英語記事の原文提供が進めば、アジア・北米ユーザーの取り込み余地もある。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【まとめ】

SmartNews+は「読む」と「買う」を一つの料金で束ね、読者の可処分時間と可処分所得を同時に取り合うモデルを提示しました。メディア各社は収益多角化の実験場を得て、小売業は行動変容データを獲得。情報と消費の融合が進むほど、ニュースアプリは“決済を伴うプラットフォーム”へと進化し、メディア産業の価値連鎖を拡張していくでしょう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました