#53 ENEOSホールディングス2024年3月期の決算

ENEOSホールディングス(以下、ENEOS HD)は、2024年3月期の決算を発表し、売上高13兆8,566億円、営業利益4,649億5,000万円、純利益2,881億2,000万円を計上しました。 これらの数値は、前期と比較して売上高が減少した一方で、営業利益と純利益が増加していることを示しています。

 

売上高の減少要因

 

売上高は前期の15兆166億円から13兆8,566億円へと減少しました。 この主な要因として、原油価格の下落や国内燃料需要の低迷が挙げられます。特に、国内市場におけるガソリンや軽油の需要減少が影響を及ぼしました。

 

営業利益と純利益の増加要因

 

一方、営業利益は前期の2,812億9,000万円から4,649億5,000万円へと増加し、純利益も1,437億7,600万円から2,881億2,000万円へと大幅に増加しました。 この増加の背景には、以下の要因が考えられます。

1. 在庫評価益の増加:原油価格の変動に伴う在庫評価益が利益を押し上げました。

2. コスト削減の効果:製油所の効率化や運営コストの削減が奏功し、利益率の改善に寄与しました。

3. 電力・素材部門の好調:電力事業や素材事業における収益性の向上が全体の利益増加に貢献しました。

 

セグメント別の業績

• エネルギー事業:売上高は12兆7,110億円で、前期比42.3%の増加となりました。 しかし、在庫影響を除いた営業利益は162億円と、前期比84.9%の減少となっています。これは、石油製品のプラスタイムラグの反転や石油化学製品の市況低迷、電力事業における減損などが影響しています。

• 石油・天然ガス開発事業:売上高は2,010億円で、前期比17.3%の減少となりましたが、営業利益は1,140億円と、前期比17.5%の増加を示しました。 これは、資源価格の上昇や円安の影響が寄与しています。

• 金属事業:売上高は1兆6,378億円で、前期比10.9%の増加となりました。 営業利益は687億円で、前期比47.7%の増加を示しています。これは、機能材料や薄膜材料(先端素材)の増販などが影響しています。

 

今後の展望と課題

 

ENEOS HDは、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを強化しています。具体的には、再生可能エネルギー事業の拡大や水素供給体制の構築、CCS(炭素回収・貯留)技術の導入などを進めています。 また、国内の燃料需要の減少に対応するため、製油所の統廃合や効率化を進め、競争力の強化を図っています。

 

しかし、国内市場の縮小やエネルギー転換の進展に伴う事業環境の変化に対応するため、さらなる事業ポートフォリオの見直しや新規事業への投資が求められます。特に、再生可能エネルギーや次世代エネルギー分野での競争力強化が重要となるでしょう。

 

まとめ

 

ENEOSホールディングスの2024年3月期決算は、売上高の減少にもかかわらず、営業利益と純利益の増加を達成しました。これは、在庫評価益の増加やコスト削減、電力・素材部門の好調が寄与しています。今後は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、事業ポートフォリオの最適化や新規事業への投資を通じて、持続的な成長を目指すことが求められます。

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