1.背景
4月下旬から5月にかけて、国内外の大手企業が一斉に2024年度(2025年3月期)決算を発表し、市場では業績の良し悪しが投資判断に直結する「決算シーズン」が本格化している。世界的な需要変動や為替影響、政策動向が企業業績に及ぼす影響を見極めるうえで、今期は特に注目度が高い。
2.トヨタ自動車
トヨタ自動車は3月期通期の営業利益予想を従来の4.3兆円から4.7兆円へ9%引き上げた。インセンティブ抑制や価格設定の見直し、安定した生産体制が奏功し、3~12月期の営業利益は1.22兆円となったが、為替面での円安メリットも寄与したと説明している 。
3.ソニーグループ
ソニーはゲーム部門の堅調な収益拡大を背景に、通期営業利益予想を1.31兆円から1.34兆円へ約2%上方修正した。第3四半期の営業利益は4693億円と前年同期比で1%増加し、PlayStation5の販売台数は9.5百万台となったほか、ネットワークサービス利用者数も1億2900万人へ拡大した 。
4.ソフトバンクグループ
ソフトバンクGは第3四半期(10~12月)において、ビジョン・ファンド運用先企業の評価損響きで3692億円の純損失を計上した。投資活動は鈍化したものの、25年以降はAI関連プロジェクト「Stargate」や「Cristal」を通じた成長を目指す方針を示しており、中長期的なリターン創出に焦点を当てる構えだ 。
野村HDは2025年3月期第4四半期において、投資銀行や証券業務の活況を受けて、四半期ベースで過去最高益を達成した。10~12月期の純利益は前年同期比で27%増加し、企業買収・資金調達案件での手数料収入が好調に推移したことが寄与している 。
6.三菱商事
三菱商事は連結純利益を9507億円から7000億円へ26%減益予想に引き下げた。前年同期の大規模な資本取引による一時利益がなく、資源・金属セグメントの先物市況も一部悪化していることが主因だとしている 。
7.今後の注目ポイント
・為替変動の影響:円安・円高の振れ幅が企業収益に直結するため、政府・日銀の為替介入動向が焦点となる
・来期見通し:米中の景気減速リスクや金利動向を踏まえた来期通期予想の精度向上度合い
・ESG・グリーントランスフォーメーション(GX):資源高や脱炭素投資が企業の将来キャッシュフローに与える影響
8.まとめ
大型企業の決算発表が一巡しつつある中で、各社の業績動向は業種や事業ポートフォリオによって明暗が分かれた。足元の収益力改善策や新規投資方針、マクロ環境の変化を総合的に分析し、ポートフォリオの見直しや新規投資機会の発掘につなげたい。今後も四半期ごとの業績開示を丁寧にフォローし、市場動向を先取りした情報発信を心掛ける。
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