はじめに
2025年第2四半期の決算で、ディズニーはテーマパークとクルーズ事業で堅調な成長を示した一方、ストリーミング事業は収益は前年同期比で改善したものの、株価は年初来で17%下落し、投資家の期待には届いていない状況だ。CEOボブ・アイガーは長期的な見通しに依然楽観的だが、ストリーミングの黒字化と成長戦略の再構築が急務となっている 。
ストリーミング事業の現状
ディズニー+の有料会員数は四半期で1.4百万人増の1.26億人となり、Huluを含むDTC(Direct-to-Consumer)全体では1.8億超に達した 。同事業の営業利益は3.36億ドルと前年同期の0.47億ドルから大幅に増加したが、総収益に占める割合はまだ限定的であり、競合他社と比べても成長スピードは鈍い 。
Disney+の苦戦要因
コンテンツ投資の拡大:2025年度には制作およびライセンス契約を含め約230億ドルのコンテンツ費用を見込む 。大規模投資が必要な一方で、短期的な収益化が追いついていない。
価格上昇の副作用:ストリーミング料金を引き上げた結果、ARPUは改善したものの、利用者の価格感度を高め解約率上昇の懸念もある 。
激化する競争環境:NetflixやAmazon Prime Video、Apple TV+などとの「ストリーミング戦争」は依然激しく、独自性のある大型IPやアドプランの強化が求められる。
エスピンオフの可能性
過去にはESPNを切り離す検討が報じられたが、アイガー自身は「必ずしもスピンオフではなく戦略的パートナーとの提携を模索する」と述べており、完全切り離しの可能性は低いとみられる 。一方で、ESPNブランドのストリーミング単独サービス(「ESPN Flagship」または「ESPN All Access」)は2025年秋のローンチを予定しており、ESPN+やベッティング機能を統合した新バンドル戦略が注目される 。さらに、ペン・エンターテインメントとのスポーツベッティング提携は、将来的な資本政策やスピンオフに向けた布石とも指摘されている 。
Bob Iger体制の再評価
アイガーは2022年11月に復帰し、2026年末までの契約延長を受けている 。そのリーダーシップの下でパーク事業は回復を見せたものの、ストリーミング事業の黒字化と株価低迷は依然大きな課題だ。社内では後継者候補の選定が進められており、2026年までに新CEOを迎える準備が進行中とされる 。投資家は、より迅速な収益化戦略とコスト管理の徹底を求める声を強めている。
再建に向けた展望
コンテンツの質と量の最適化:大型IPに集中し、量産型のストリーミング作品を絞ることで制作クオリティと費用対効果を高める
広告収入モデルの強化:AVOD(広告付き動画配信)プランの拡充でARPUを底上げし、解約抑制につなげる
バンドル戦略の再構築:Disney+、Hulu、ESPN Flagshipを顧客ニーズに合わせた価格帯で再編し、バンドル加入率を向上させる
国際展開の加速:新興市場でのローカルコンテンツ強化と提携モデルで加入者基盤の拡大を図る
結論
ディズニーの再建には、ストリーミング事業における収益モデルの見直しとコスト効率化が不可欠だ。Bob Iger体制の下で進められるESPN単独サービスや広告付きプランの拡充など、新たな戦略が奏功すれば、株価回復と長期的成長への道が開けるだろう。
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