#599 テスラ株急落の裏側:値下げ競争と中国市場の減速

テスラ株は昨年12月の史上最高値以降、時価総額ベースで約45%もの下落を記録し(12月17日の1.5兆ドルから現在は約0.8兆ドルに)、「EVバブル崩壊」の懸念が広がっている◆cite turn5view0。その主因として、大規模な値下げ競争と主要市場である中国の需要減速が挙げられる。

 

【テスラ株急落の現状】

今年1~3月期の四半期売上高は前年同期比で13%減少し、過去3年で最も低い水準となったことが明らかになった◆cite turn6view0。これを受けて発表直後の取引では株価が7%超下落するなど、業績悪化への懸念が株価に直結している。加えて、CEOイーロン・マスク氏の政治的発言や米欧での政治的反発もブランドイメージを損ない、投資家の離反を加速させた。

 

【激化する値下げ競争】

テスラは需要喚起を狙い、各市場で積極的な値下げを実施している。中国では2024年4月にモデル3の価格を最大14,000元引き下げ、231,900元としたほか、ドイツを含む欧州・中東・アフリカ各地でも大幅な値下げを敢行した◆cite turn3view0。さらに直近では、米国で廉価版モデルY(ロングレンジ後輪駆動)を税額控除適用前44,990ドル(適用後37,490ドル)で投入し、新規顧客層の開拓を図っている◆cite turn1news10。こうした動きは競争激化を招き、他のEVメーカーとの間で「値下げ戦争」を誘発、結果的に利益率圧迫を招いている。

 

【中国市場の失速】

テスラにとって最大市場である中国でも、需要減速が鮮明になっている。2025年4月の中国製テスラEV販売台数は前年同月比6%減の58,459台となり、3月比でも25.8%減少と7カ月連続のマイナスを記録した◆cite turn2view0。中国のEV市場ではBYDや他国内メーカーが台頭し、価格面だけでなくラインアップの多様性でもテスラを上回るケースが増加。さらに欧米での政治的反発によるブランドダメージも、中国輸出モデルの欧州向け販売減少に拍車をかけている。

 

【投資家が押さえるべきポイント】

・技術期待と業績悪化のジレンマ

自動運転(FSD)やロボタクシーへの先行投資は長期的成長の鍵とされるが、短期的には値下げと市場減速による収益圧迫が重荷となっている。投資家は「FSD実用化と利益率回復のどちらが先か」を見極める必要がある。

価格戦略の持続可能性

値下げ政策は一時的に需要を喚起するものの、継続的な利益率低下を招くリスクが高い。特に、2025年以降のコスト上昇やマクロ経済の不確実性が重なる中で、どこまで価格競争に耐えられるかが焦点となる。

・中国以外の新興市場開拓

同社はインドやサウジアラビアなど中国外市場への参入を強化しており、次世代モデルの上海生産(2026年開始予定)や現地生産体制の構築が中期的な成長シナリオを左右するだろう◆cite turn2view0。

 

まとめ

テスラ株の急落要因は「過剰な値下げ競争」と「中国市場の失速」という二大要素に集約できる。今後の株価回復には、利益率回復策としての価格戦略見直しと、中国以外市場での収益確保が不可欠だ。投資家は短期的な業績動向だけでなく、長期的な技術優位性と利益構造の健全性を総合的に評価することが求められる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました