#24 USスチールの最新決算とトランプ次期政権下での展望

米国の大手鉄鋼メーカー、USスチール(United States Steel Corporation)は、2024年第3四半期の決算を発表しました。同社は、調整後1株当たり利益(EPS)を44~48セントと予測し、これは市場予想の36セントを上回るものでした。また、調整後EBITDAは約3億ドルと見込んでいます。この好調な業績は、国内のフラットロールド鋼材の需要が堅調であることに起因しています。

 

さらに、USスチールアーカンソー州で新たなフラットロールド鋼材施設「ビッグリバー2(BR2)」の稼働を2024年第4四半期に予定しており、生産能力の増強を図っています。一方で、欧州の需要減少に対応するため、一時的に高炉を停止する措置も取っています。

 

現在、USスチールは日本製鉄による買収プロセスの最中にあります。日本製鉄は、USスチールの買収を2024年末までに完了させる意向を示しており、対米外国投資委員会(CFIUS)や独占禁止法の審査を進めています。同社の森高弘副会長は、これらの審査が順調に進んでいると述べています。

 

しかし、2024年11月の米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が再選されたことにより、USスチールの今後の展望には新たな変数が加わりました。トランプ氏は選挙期間中、日本製鉄によるUSスチールの買収に対し、国家安全保障の観点から「直ちに阻止する」と明言していました。 そのため、トランプ次期政権下での買収手続きには慎重な対応が求められます。

 

トランプ氏の「アメリカ第一」政策は、鉄鋼業界に大きな影響を及ぼす可能性があります。彼は以前の政権時代に鉄鋼製品への関税を導入し、国内産業の保護を図りました。再選後も同様の保護主義的政策を継続する可能性が高く、これによりUSスチールは国内市場での競争力を維持できる一方、国際的な取引やパートナーシップには制約が生じる可能性があります。

 

また、トランプ氏の政策は、USスチールの生産コストや供給チェーンにも影響を及ぼす可能性があります。関税の引き上げや貿易摩擦の激化は、原材料の調達コスト増加や輸出市場の縮小を招く恐れがあります。さらに、環境規制の緩和やエネルギー政策の変更は、製造業全体に影響を与える可能性があります。

 

総じて、USスチールは現在の好調な業績を維持しつつ、トランプ次期政権下での政策動向を注視し、柔軟な戦略を採用する必要があります。特に、日本製鉄による買収プロセスの行方は、同社の将来に大きな影響を及ぼすため、慎重な対応が求められます。

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