◆ はじめに
フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)は1月のタレント不祥事で広告主が大量離脱し、会長・テレビ部門トップが辞任するなどガバナンス危機に直面しました。米アクティビストのダルトン・インベストメンツはこれを「変革の好機」と捉え、経営刷新を迫っています。
◆ 直近のトリガー:5月28日のダルトン声明
ダルトン共同創業者ジェイミー・ローゼンワルド氏は「1年以内に不動産事業をスピンオフさせる」と明言。他株主とも連携し、6月株主総会で自社推薦取締役が1名でも入れば改革のレールが敷けると強調しました。
◆ フジHDの応戦:独自の取締役案と“64回の対話”
フジHDは16日に公表した取締役候補4名の会社案で、ダルトン提案の12名全員を排除。28日には「ダルトン側とはメール・面談計64回の協議を重ねた」と反論資料を公表し、株主との対話実績をアピールしています。
◆ 『改革アクションプラン』の中身
5月16日に示された行動計画では
・地上波依存から配信・IPビジネスへ投資シフト
・グループ制作体制の再構築とAI活用によるコスト最適化
・不採算事業や資産のスクラップ&ビルド
・社内人権委員会設置など統治強化
――を柱に2026年3月期黒字回復を掲げました。ただし不動産スピンオフには触れず、ダルトンとの溝は埋まっていません。
◆ 株価の反応:2,900円台で神経質な往来
5月21日に3,060円まで買われた後、提案拒否が伝わると売り優勢となり30日は2,872円で終了(週間▲4%)。出来高は平均の2〜3倍を維持し、物言う株主の動向が短期モメンタムを左右する地合いです。
◆ 今後3つのシナリオ
妥協シナリオ 株主総会前に一部取締役受け入れ+不動産子会社の上場準備を表明。短期的に対立は沈静化、PBR1倍(約3,600円)接近。 プロキシーファイト突入 委任状争奪戦で議決権行使助言会社がダルトン支持に回れば、経営陣総入れ替えも視野。株価はボラティリティ拡大ながら再評価余地大。 平行線&長期戦 会社案可決で現経営体制続投。不動産分離も棚上げとなり、株価はPER・PBRディスカウントが常態化。ダルトンは持分を増やし中期圧力を継続。
◆ 投資家が見るべきチェックポイント
・6月下旬 定時株主総会の議決結果(特に社外取締役選任案の賛成率)
・総会直前の議決権行使助言会社(ISS・GL)が出す推奨レポート
・7月以降のスポンサー戻り状況とスポットCM単価
・年内メドに示される不動産事業の価値算定・再編方針
◆ まとめ
フジテレビの視聴率低迷と広告収益減は構造問題です。ダルトンが要求する「放送と不動産の分離」は、PBR0.7倍に沈む資本効率を一気に改善できる打ち手となり得ます。一方、現経営陣は自前の改革プランでスポンサー・視聴者の信頼回復を優先する構え。総会まで残り1か月、どちらのアプローチが「説得力ある価値創造ストーリー」を示せるかが最大の焦点です。
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