【はじめに】
ユニクロとGUを擁するファーストリテイリング(FR)は、2024年度に売上高3.4兆円を射程に入れるまで成長し、2025年度はさらに過去最高を更新する計画を掲げています。海外売上比率は6割を超え、もはや“日本発”という枠を超えた真のグローバルSPA(製造小売)へ転換しました。
【1 企業概要と最新業績】
・2024年度(2023年9月~2024年8月)の連結売上高は3兆円超、営業利益は5,300億円強と2期連続で最高更新。
・2025年度上期(~2025年2月)も海外全地域が2桁増収を牽引し、通期売上高3.4兆円・営業利益5,450億円を見込む。
【2 世界展開の現況】
〈ユニクロ〉
・北米:テキサス開拓が成功し、2025年度に店舗数100超へ。2027年度売上3,000億円、営業利益率20%を掲げる。
・欧州:ローマ旗艦店を皮切りに年20店ペースで拡大。2027年度売上5,000億円を目指す。
・南アジア:インドではムンバイ出店後、大都市展開と現地スキルセンター設立で人材育成も進行。
・中国:店舗「スクラップ&ビルド」で旗艦店比率を高め、2028年度売上1兆円を計画。
〈GU〉
・2024年9月、初の海外旗艦店「GU NY SOHO」を開業し米国ECも同時展開。低価格トレンドファッションでUNIQLOと差別化しつつ、米国第2HQを設置して現地デザインを加速。
【3 戦略の四本柱】
① 地域密着×グローバルSCM
各地域で売れ筋を企画する一方、製造は東南アジアを中心に集約。米国関税リスクにも「生産地分散」と「在庫前倒し」で機動的に対応する構えです。
② オムニチャネルとデジタル化
世界で1.2億超のアプリ会員を基盤に、店舗在庫・EC在庫をリアルタイム統合。ローカル倉庫を増設し「翌日受取」比率を上げることで離脱率を抑制します。
③ ESG・サステナビリティ
2030年度までに Scope1・2排出量90%削減、再エネ電力100%を掲げ、既に84.7%を再エネ化。素材も2030年に低炭素原料比率50%へ。
④ 人材育成とコミュニティ共創
北米・欧州・インド各地で現地幹部育成プログラムを展開。インドのスキルセンターは女性就業機会も創出し、地域密着ブランドへ進化中。
【4 中期KPIと店舗網】
・2025年8月時点でグループ店舗3,682店へ拡大見込み(UNIQLO約70%、GU約20%)。
・デジタル売上比率は2024年度の22%から2027年度に30%超へ。
・海外売上比率を2027年度に70%まで高め、為替耐性を強化。
【5 リスクと課題】
・中国景気減速と競合の台頭。
・米中政治摩擦による関税・物流コスト上昇。
・脱炭素投資の先行コスト。
・為替変動(円高局面での円建て売上目減り)。
【6 投資家への示唆】
① 北米と欧州は市場シェアがまだ1%未満で、旗艦店投資が長期成長ドライバー。
② GUの海外ヒット次第では“第2成長エンジン”となり、マルチブランド化が進展。
③ サステナブル素材・再エネ導入がコスト圧力になる一方、プレミアム付与で中長期の粗利維持が可能。
④ 株主還元は増配余地が大きく、2025年度配当480円(前期比+80円)計画。
【まとめ】
LifeWearの理念を「世界の日常服」へ昇華させるファーストリテイリングは、旗艦店網とデジタル基盤を両輪に、北米・欧州・インドでパラレルに成長エンジンを回しています。短期的には中国需要や貿易摩擦という逆風もありますが、低シェア市場の伸びしろ、GUの米国挑戦、そしてESG経営がもたらすブランド価値向上によって、同社のグローバル戦略は今後も高い成長確度を維持すると見込まれます。
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