#682 トランプ氏とイーロン・マスク氏の決裂──巨大テックとホワイトハウスが衝突した本当の理由と今後の波紋

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【リード】

2025年6月5〜6日、ドナルド・トランプ大統領とテスラ/スペースXのCEOイーロン・マスク氏が互いを痛烈に批判し合い、公然たる「決裂」が世界を駆け巡りました。トランプ大統領は「連邦補助金や契約を全面見直し」とまで言及し、テスラ株は1日で時価総額が1,500億ドル超吹き飛ぶ歴史的急落を演じました。米政界・産業界・投資家が注視するこの対立の背景と今後のシナリオを整理します。

【1 決裂に至るタイムライン】

・2024年大統領選:マスク氏はトランプ陣営に約2億7,000万ドルを拠出し、両者は「経済改革パートナー」として急接近。

・2025年3月:ホワイトハウスでEV展示イベント。トランプ氏は赤いモデルSに試乗し「テスラは偉大な企業」と絶賛。

・5月30日:両氏が「政府効率化プロジェクト」完了を宣言する記者会見を実施。水面下では歳出削減幅を巡り不協和音。

・6月5日:下院可決済みの大型減税・歳出法案(One Big Beautiful Bill)をマスク氏がXで「ビッグ・アグリー・スペンディング」と痛烈批判。

・6月6日:トランプ氏は記者団に「彼は気が触れた」「補助金も契約も精査する」と応酬。両氏のSNS投稿が拡散し、テスラ株が14%急落。

・同日夜:マスク氏が「米国には中道新党が必要」と投稿。決裂は決定的に。

【2 対立の核心──共和党大型法案をめぐる攻防】

 法案は①法人税率の再引下げ、②EV・再エネ税控除の大幅縮小、③歳出増を伴うインフラ再投資が柱。マスク氏は「財政赤字を2.4兆ドル拡大させる」と非難し、EV控除撤廃をむしろ容認する姿勢を示しました。トランプ氏は「EV市場は冷え込み気味で、テスラ救済のための優遇など不要」と切り返し、政治的駆け引きが個人攻撃へ転化した格好です。

【3 ビジネスインパクト】

3-1 テスラ

・14%の株価下落は過去最大。自動運転規制緩和や対中関税緩和など、マスク氏が期待した「政策プレミアム」が剥落。

3-2 スペースX/Starlink

・国防総省・NASAとの大型契約が再審査対象に。Starlinkの農村向けブロードバンド補助も凍結リスク。

3-3 EV・自動車産業

・EV税控除縮小案がそのまま成立すればGM・フォードなど他社にも逆風。ただし伝統的自動車メーカーは「補助金頼みのテスラに比べ影響限定」との指摘も。

3-4 市場心理

・個人投資家のテスラ離れが加速。長期資金は「補助金フリーで戦える企業」へ分散する動き。

【4 政界への波紋】

・共和党内:法案の上院通過には3票しか余裕がなく、マスク氏系ドナーの資金離脱が痛手に。

・民主党:EV補助金維持派は「敵失」として上院修正を模索。

・2026年中間選挙:トランプ氏は「テスラ利権切り」を保守層へのアピールに転用、マスク氏は「新党」構想で保守・リベラル双方に揺さぶり。

【5 今後のシナリオ】

シナリオA 雪解け

 共和党が法案を一部修正し、EV税控除の“ソフトランディング”を図る。トランプ氏は「見直しはしたが補助金縮小は進める」と勝利宣言、マスク氏は沈黙し市場は徐々に安堵。

シナリオB 全面衝突

 ホワイトハウスが国防・通信契約を本格見直し。テスラは株価二番底、スペースXのIPO構想が後退。

シナリオC 第三極台頭

 マスク氏がIT・VC資産家を束ね「中道テック党」立ち上げ。2028年大統領選のキャスティングボートに。

【6 投資家へのチェックポイント】

・上院審議の修正条項(EV控除、対中関税)

・国防総省/NASAの次期入札スケジュール

・テスラのQ2販売動向とリコールリスク

・X(旧Twitter)の広告売上推移──マスク氏の発言頻度と逆相関の可能性

・ライバル企業(GM/BYD/トヨタ)への資金シフト

【まとめ】

今回の決裂は「企業トップ × 大統領」という前例の少ないパワーゲームの破綻例です。補助金や契約という現実的なレバレッジが動く以上、対立の深度はビジネスの存亡に直結します。投資家は感情的な発言よりも法案修正プロセスと政府調達の行方を注視し、“政策リスク耐性”をポートフォリオに織り込む必要があるでしょう。

ハッシュタグ:

#トランプ #イーロンマスク #テスラ #米国政治 #EV市場 #SpaceX #Starlink

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