#577 【MUFG決算目前、株価は「材料出尽くし」か「第二波」か?】

三菱UFJフィナンシャル・グループMUFG、8306)は5月15日(木)に2025年3月期通期決算を発表予定です。同社は4月30日に通期純利益目標を1兆8,600億円(前回比+6.3%)、期末配当予想を1株39円へ上方修正しており、決算自体への期待感は高まっています。

f:id:EuropeSoccerOjisan:20250505182842p:image

下のウィジェットは米国ADR(ティッカー:MUFG)のリアルタイム株価です(東証株価1,737.5円=5月2日終値)。決算を控え、既に相当分の好材料が株価に織り込まれているのか、それともまだ上値余地があるのか——本稿では「上がりそうな要素」と「下がりそうな要素」を整理します。

 

――――――――――――――――――――

上がりそうな要素

――――――――――――――――――――

・配当増額と高配当利回り

 期末39円(年間64円)への増配予想により、直近株価ベースの配当利回りは約3.7%。邦銀トップクラスの株主還元姿勢が評価されやすい。

 

金利正常化による純金利マージン拡大

 日銀は2024年3月にマイナス金利を撤廃し、現在の政策金利は0〜0.1%。国内短期金利のわずかな上昇でもメガバンクのNIIはてこ入れされやすい。

 

・円安による海外収益の目減り圧縮

 5月5日時点のドル円は144円台。前年同期平均131円台からの円安は、海外子会社・持分法収益(とりわけモルガン・スタンレー持分)の円換算値を押し上げる。

 

・1,860億円への純利益目標上振れ

 株式売却益や貸倒引当金戻入れが利益を押し上げ、目標を年2度上方修正。市場は一段の上振れや自社株買い示唆を期待。

 

――――――――――――――――――――

下がりそうな要素

――――――――――――――――――――

・債券ポート再構築に伴う営業減益

 上方修正の一方で、債券リバランス費用により営業純益ベースは▲3,600億円見通し。金利上昇局面での保有債券評価損リスクはなお残る。

 

・追加利上げ観測と国債含み損リスク

 市場では日銀が0.5%への追加利上げを検討との観測もあり、長期金利上昇が進むと保有JGBの評価損拡大懸念。

 

・世界景気減速と信用コスト増

 S&Pはアジア太平洋の銀行で25年に与信費用が増加すると予想。海外与信の比率が高いMUFGは世界景気次第で貸倒損失再拡大のリスク。

 

円高反転リスク

 米国通商政策を背景にアジア通貨高機運が高まり、ドル円が140円割れとなると海外収益の円換算益が薄れる。

 

――――――――――――――――――――

株価の織り込み度合い

――――――――――――――――――――

東証株価は年初来高値2,243円から5月2日時点で約22%下落。PBRは0.83倍、予想PERは10倍台前半にとどまり、配当増額を織り込んだにしてはバリュエーションは割安圏。一方、決算当日にさらなる自社株買いが示されなければ「材料出尽くし」で短期調整もあり得る。

 

――――――――――――――――――――

まとめ:戦略的スタンス

――――――――――――――――――――

・中期視点:日銀の緩やかな利上げ継続と円安基調が維持される限り、メガバンクの中でもMUFGは配当+αの魅力が高く、押し目は拾いたい。

・短期視点:5月15日の決算では①最終利益の着地が目標をさらに上回るか、②追加の自社株買いがあるか、③来期(2026年3月期)の増益ガイダンスが示されるか——これらが株価の「第二波」発射装置になる。一方、債券評価損や信用コスト見通しが悪化すれば失望売りも想定される。

 

総じて、現行株価水準では「上昇シナリオ3:下落シナリオ2」程度のリスク・リワード。決算当日のヘッドライン次第で機敏にポジションサイズを調整するのが得策と言えるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました