#578 トヨタ決算直前プレビュー—株価は再加速するのか?

はじめに

5月8日(木)※日本時間、トヨタ自動車(7203/TM ADR)は2025年3月期(FY2025)通期決算を発表する予定です。第3四半期までを終えた時点で営業利益・純利益とも会社計画を上回るペースで進捗しており、市場には「上方修正もあり得る」との期待感が漂います。もっとも、リコール対応や米国関税リスクなどの逆風もあり、発表後の株価は材料の取捨選択次第で大きく振れかねません。今回は上昇・下落双方のファクターを整理し、シナリオ別に株価の行方を考察します。

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■ 決算スケジュールと市場期待

・決算発表:2025年5月8日(投資家向けIRカレンダー)

・会社予想(11月公表)営業利益4兆7,000億円、純利益4兆5,200億円(営業利益率10%)

・為替前提:通期平均147円/US$(2Q説明会資料)

・第3四半期累計(4〜12月)営業利益率11.5%、ROE15.6%(同期間)

 

■ 株価とバリュエーションの現状

ADR終値192.24ドル、予想PER約7倍、PBR 0.9倍台。過去5年平均PER(11倍前後)からは依然ディスカウント。

TOPIX自動車平均PER約10倍と比較しても割安水準。

 

■ 上がりそうな要素

 

3月の海外販売が過去最高(+6.7%)、世界販売も前年同月比+10.9%と勢い継続。需給タイトな北米が牽引。 
為替:147円想定に対し直近の円相場は148円台中心。想定比で若干の円安寄与が見込める。 
ハイブリッド車の販売構成比上昇(北米では3月に電動化率49%、1Qは51%)によるミックス改善と高粗利。 
EV含む電動化投資の進展:北米電池工場が4月稼働開始。関税リスクの局地化と物流コスト低減が期待。 
中期EVロードマップ拡充(27年までに内製EV15車種・年産100万台計画)は株主への将来成長アピール材料。 
コストダウン効果とROE20%長期目標の継続コミットがガバナンス評価を下支え。 

 

 

■ 下がりそうな要素

 

米国が4月から発動したメキシコ・カナダ経由完成車に25%関税。北米工場への部品流動も影響し、来期ガイダンスが慎重になる恐れ。 
1月以降の連続リコール(Tacoma10万台超ブレーキ系など)で品質コストとブランドイメージに懸念。 
EV販売比率は依然1%台にとどまり、政策主導のゼロエミッション規制強化局面で評価ギャップが生じやすい。 
日銀の追加利上げ観測による円高シナリオ(130円方向)が顕在化すると、来期利益目減り懸念。 
ダイハツ出荷停止問題の余波:中小型車セグメントでのシェア低下と関連費用が今期・来期に残る可能性。 

 

 

■ シナリオ別株価イメージ(筆者試算)

|シナリオ|決算内容|会社計画修正|市場反応|想定株価レンジ(円換算)|

|強気|営業益+5%上方修正/配当維持または増配|来期横ばい〜小幅増益ガイダンス|ポジティブサプライズ|ADR220ドル〜230ドル(9%〜16%上昇)|

|中立|計画線で着地/ガイダンス保守的|サプライズなし|ADR190ドル〜200ドル(±4%)|

|弱気|リコール費用・関税影響を織込み減益ガイダンス|ネガティブサプライズ|ADR170ドル〜180ドル(6%〜12%下落)|

※為替1ドル=150円想定。あくまで参考シミュレーションで投資判断を保証するものではありません。

 

■ まとめ

好調なハイブリッド販売と円安効果が「堅調決算→株価上昇」のメインシナリオを支えます。一方で品質問題・関税・EV遅れという構造リスクが圧力をかけるため、上値追いには来期ガイダンスが鍵となります。決算当日のメッセージで①北米関税耐性、②EV戦略の具体性、③リコール再発防止策が明確に示されれば上昇継続の公算大。逆にどれかが曖昧なままなら「噂で買って事実で売る」展開も視野に入ります。

 

当ブログでは決算発表後に速報レビューも掲載予定です。ぜひご期待ください。

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