♯703 三菱UFJ(8306)2,300円前後で底堅く推移──高市新体制・公明離脱後の金利と資本政策が映すフェアバリュー(2025年10月13日)

企業分析

イントロダクション(2025年10月13日)
8月の第1四半期決算通過後も、三菱UFJ(8306)は概ね2,250〜2,350円の往来で推移し、現在は2,300円前後が基準レンジ。PBRは1.2倍台、配当利回りは3%台前半。自己株買いの進行が下値を支えている。政局は自民党総裁選後に高市新体制が発足、公明党は連立を離脱。政策不確実性は高まったが、財務省の超長期国債減額と日銀のテーパリング減速が長端金利のスパイクを緩和し、銀行株には「緩やかな正常化+還元継続」という環境が続く。

現状整理(政策・需給のアップデート)
・財務省は20・30・40年の超長期を減額し、1〜5年や流動性供給入札に振り替え。市場機能の回復を優先。
・日銀は今期は計画通りのテーパリング、2026年度から四半期2000億円減へ減速。長端ボラの過度な拡大を抑制。
・株価レンジは2,250〜2,350円の往来。イベント時に出来高が膨らみやすい。

政局の影響(総裁選後・公明離脱)
・高市新体制は成長重視・家計支援を掲げ、拙速な追加利上げ観測は後退。貸出需要と手数料ビジネスに中期的プラス。
・公明離脱で国会運営の不確実性が上がり、タームプレミアムが一時的に上振れ。ただし財務省の供給調整がクッション。

第2四半期に向けた論点(チェックリスト)
A 利ざや(国内預貸金利回り差)
0.9%台後半の維持が焦点。急利上げシナリオ後退でボラは抑制、着実な積み上がりに期待。

B 与信コスト
北米・アジアの個別案件に留意。通期計画は保守的で、期初の厚め計上の反動がどの程度出るかを確認。

C マーケット・投資勘定
JGB長端の上振れと超長期減額の綱引き。評価変動は想定内に収まりやすいが、政局ヘッドラインで瞬間風速はあり得る。

D 株主還元の実行速度
上期2,500億円の自己株買いは順調。年末の追加余地が引き続き意識される。

E 規制資本(CET1)
ターゲット9.5〜10.5%を上回って推移。超過資本の機動配分(自社株買いと成長投資)のバランスが焦点。

直近の株価・バリュエーション
・株価 2,300円前後
・PBR 1.2〜1.3倍、PER おおむね9倍
・配当利回り 約3%台前半(会社計画70円)

ブル/ベア材料(10月版)
ブル
・利ざや改善の持続、2.0兆円計画の達成可能性
・自己株買いの進捗と年末の追加示唆
・日銀テーパリング減速で債券評価損の急拡大懸念が後退
ベア
・政局流動化でタームプレミアム上振れが反復
・海外クレジットの突発悪化、市場部門の振れ
・想定以上の与信費用の前倒し計上

短期トレード想定(10〜11月)
・ポジティブ 中間に向け追加還元示唆や利ざや上振れで2,350円トライ
・ニュートラル 業績堅調も政策待ちで2,250〜2,320円の往来
・ネガティブ 海外与信や市場損益の悪化で2,080〜2,150円の押し目形成

3〜6か月の株価シナリオとターゲット
・ベース(確率中) PBR1.2〜1.3倍、配当70円、年末に追加買い戻し 2,300〜2,450円
・アップサイド(確率低中) 還元上積みとガイダンス上方修正 2,450〜2,550円
・ダウンサイド(確率低) 政局不安長期化と与信悪化 2,000円近辺

実務フロー(明日の立ち回り)
1 開示と会見は利ざや、与信、還元の3点を最優先で確認
2 基本は押し目指値。2,250円前後は厚め、2,150円台は中期の打診候補
3 2,350円上抜けはショートカバー同伴の可能性があり、短期追随も選択肢
4 中期は配当込み年8〜10%のトータルリターン設計を維持

結論(投資判断)
押し目買い寄りの「買い」継続。利ざや改善の持続、潤沢な資本と株主還元の三点セット、PBR1倍割れディスカウント解消後の新平衡レンジが背景。最大リスクは政局起点の金利スパイクだが、財務省の供給調整と日銀の減速テーパリングがクッションとして機能する限り、銀行セクターの構造的上方バイアスは維持される見立て。

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#693 三菱UFJ(8306) 決算前夜の総点検:業績見通し、株価予想、買い判断
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注記・免責
本稿は情報提供であり、特定銘柄の売買を勧誘するものではありません。実際の投資判断は最新の開示資料をご確認のうえご自身で行ってください。

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