はじめに
4月25日に発表された日本ゼオン(4205)のFY2024決算を整理し、事業セグメントの状況、財務体質、次期見通しを踏まえて投資視点を考察する。
I. 決算ハイライト
・連結売上高は4,206億円(前年比+10%)で過去最高を更新。円安とエラストマーの販売価格改定が寄与した。
・営業利益は293億円(+43%)。原料高転嫁と光学フィルム歩留まり改善が奏功。
・経常利益331億円(+23%)に対し、純利益は262億円(‑16%)。前年は投資有価証券売却益が膨らんでおり、特殊要因剥落が響いた。
II. セグメント別動向
スペシャリティマテリアルズ
売上高1,216億円、営業利益176億円。COP(環状オレフィンポリマー)と光学フィルムの出荷が堅調で、能増効果も寄与。
エラストマー
売上高2,366億円、営業利益109億円。合成ゴムはナフサ安ながら販売価格改定が進み採算改善。販売数量は期末に向け回復傾向。
その他・調整
売上高625億円、営業利益8億円。樹脂商社機能と社内消去が中心で大きな変動なし。
III. 財務体質とキャッシュフロー
・総資産は5,338億円(前年比+15億円)。自己資本比率66.9%と依然良好。
・営業CFは208億円→投資CF▲220億円でフリーCF▲12億円。光学フィルム等の設備増強投資が先行した。
・ネットキャッシュは減少したが、D/Eレシオ0.07と財務余力は十分。
IV. FY2025会社計画のポイント
・売上高4,095億円(‑3%)、営業利益280億円(‑5%)と保守的。前提レートは1ドル=140円、ナフサ63,000円/KL。
・年間配当は72円(実質▲3%)を予想し、DOE4%基準を堅持。加えて上限1000万株・100億円の自己株取得枠を設定。
V. 事業トピックス
・大型液晶TV向け3,000mm幅遅延フィルム新ラインを建設。大型化トレンドの追い風を取り込む。
・中国市場でリチウムイオン電池用アノードバインダー販売JVを設立し、バッテリー材料を強化。
VI. 投資視点
収益ドライバー
光学フィルムとCOPは高付加価値化が進行。電池バインダーはEV需要を背景に高成長余地。
リスク要因
原料ブタジエン価格と為替(円高)の逆風。米国関税強化によるコスト増を会社は限定的と見るが注視したい。
バリュエーション
営業利益率は7%台まで改善。来期会社計画は慎重で、業績上振れ余地と株主還元強化が株価の下支え要因となる。
まとめ
FY2024は増収・営業増益と事業の底力を示した。純利益は特殊要因で見かけ上減益となったが、キャッシュ創出力は堅調で、積極投資と株主還元を両立できる財務余力を保つ。FY2025計画は保守的で、光学フィルム増産とEV関連材料の拡大が想定超過すれば上方修正の可能性もある。短期的には原料市況と為替のブレがリスクだが、中長期では高機能材料シフトがEPS成長をけん引すると考える。
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