#566 価格加重型インデックスとは何か――日経平均を例に仕組みと寄与度を理解する

はじめに

日経平均株価(Nikkei 225)は「価格加重型インデックス」に分類されます。株価水準が高い銘柄ほど指数への影響(ウエート)が大きくなるため、構成銘柄の値動きを理解するうえで “どの株がどれだけ効いているのか” を数字で把握しておくことは欠かせません。本稿ではファーストリテイリング(9983)を題材に、計算ロジックと寄与度の読み方を整理し、直近(2025年5月2日終値)におけるウエート上位10銘柄のランキングを示します。

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1 計算式――株価×係数の合計を除数で割る

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日経平均 = { Σ(株価 × PAF) } ÷ Divisor

 

・PAF(Price Adjustment Factor)は株式分割や額面差、ウエート上限(キャッピング)を吸収する価格調整係数

・Divisor(除数)は銘柄入替やコーポレートアクションでも指数値が飛ばないように調整される定数(2025年5月2日時点 30.06422294)

 

価格加重のため、時価総額が小さくても株価が高い企業はウエートが大きくなります。

 

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2 PAFとキャッピング――10%上限の仕組み

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2022年以降、日経平均では「一銘柄のウエートを10%未満」に抑える方針が段階的に導入されています。上限超過が見込まれる場合、キャップ比率(capping ratio)が掛けられ、PAFが引き下げられます。ファーストリテイリングには2025年1月末からキャップ比率0.8が適用され、もともと3.0だったPAFは 3.0 × 0.8 = 2.4 に補正されています。

 

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3 ウエートを数字で見る――ファーストリテイリングの10.4%

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2025年5月2日終値(株価47 990円)でウエートを計算すると、

47 990 × 2.4 ÷(36 830.69 × 30.06422294) ≒ 10.40%

となります。この10.4という数字は「同社の株価が1%動くと日経平均が約0.104%動く」ことを意味します。

 

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4 寄与度の求め方――何ポイント動かしたか

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株価1円当たりの指数影響度

= PAF ÷ Divisor

= 2.4 ÷ 30.06422294 ≒ 0.0798ポイント

 

代表例(終値基準)

1円変動   → 約0.08ポイント

10円変動  → 約0.80ポイント

100円変動 → 約7.98ポイント

1%変動(約480円) → 約38ポイント

 

つまり当日ファーストリテイリングが100円高で引けた場合、日経平均を約8ポイント押し上げる計算です。

 

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5 最新トップ10銘柄ウエートランキング

(2025年5月2日終値ベース)

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順位 コード 企業名            ウエート

1 9983 ファーストリテイリング      10.40%

2 8035 東京エレクトロン           5.73%

3 6857 アドバンテスト           4.58%

4 9984 ソフトバンクグループ        4.01%

5 9433 KDDI                 2.79%

6 4519 中外製薬               2.34%

7  6098 リクルートホールディングス      2.24%

8  6762 TDK                  2.10%

9  4543 テルモ                 2.05%

10 4063 信越化学工業                  2.04%

 

これら上位10社だけで指数構成比の約44%を占めており、とりわけファーストリテイリング東京エレクトロンの2銘柄で16%を超えます。価格加重指数では個別の株価水準が高い企業ほど影響度が大きくなるため、先物ヘッジや指数連動投資の際は、これら上位銘柄の決算や材料に注目しておく必要があります。

 

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まとめ

価格加重型である日経平均は、株価水準とPAF(+キャッピング)がウエートを決めるシンプルな構造を持ちます。ファーストリテイリングの場合、株価1円の変動が日経平均を約0.08ポイント動かし、1%の変動で指数は約38ポイント動きます。最新データでは上位10銘柄の合計ウエートが指数の約44%を占めており、ハイテク・通信・小売大手の値動きが指数を大きく左右する点が、時価総額加重のTOPIXなどとは大きく異なります。指数を読み解く際は除数・PAF・キャップ比率を確認しつつ、ウエート上位銘柄の動向を日々チェックすることが重要です。

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