売上高1兆591億円、営業利益率51.9% ― 超高収益モデルが再び最高益を更新
■ 注目ポイント
・売上高が初めて1兆円を突破し1兆591億円(前年比+9.5%)
・営業利益5,498億円(+11.1%)で4期連続の過去最高、営業利益率は51.9%に上昇
・経常利益5,610億円(+8.0%)、純利益3,986億円(+7.8%)
・1株当たり配当を300円→350円へ増配(配当性向21.3%)
・会社側は2026年3月期の業績予想を引き続き非開示 ─ 高い不確実性を見据えた慎重スタンス
■ 通期ハイライトと四半期推移
1-3月期(4Q)は売上高2,839億円(+9.2%)、経常利益1,507億円(+6.3%)と加速。売上営業利益率は前年同期比1.7pt高い53.8%に達し、価格転嫁と製品構成改善が寄与した。
■ 収益ドライバー
画像処理・3D測定系の高付加価値モデルがグローバルで拡販
北米・インドの旺盛な自動化投資が中国減速を吸収
ファブレス+直販型ビジネスにより原価・販管費を圧縮し、高マージン体質を維持
■ キャッシュフローと財務
営業CF4,095億円(+5.6%)、投資CF▲2,806億円。40%以上の自己資本成長を自社株買いではなく研究開発と販売網強化へ再投資している点が特徴。
■ 株式市場の反応とバリュエーション
決算当日の終値は61,310円(+2.5%)で時価総額14.9兆円。今期EPS1,643.8円に対するPERは約37倍と、同業平均(25倍前後)に大幅プレミアムが付与されている。
■ マネジメントメッセージと戦略
・AIアルゴリズムを組み込んだ新世代ビジョンシステムを下期投入し、半導体・EV工場向け需要を狙う
・グローバル直販体制を150拠点→200拠点へ拡充し、営業1人当たり売上を維持しつつ顧客接点を深耕
・省エネ検査装置などサステナビリティ関連製品を育成し、新規分野での売上構成比を2030年度に20%へ
■ 2026年3月期の展望(会社予想非開示のため筆者試算)
外部環境がフラットでも、既存顧客向けアップセルと新製品効果で売上成長7%前後、営業利益成長同8〜10%は確保可能と見る。為替1ドル=130円前後を想定すると、一段の円安はプラス。リスクシナリオは中国景気の急減速と米国設備投資税制の失速。
■ 投資家への示唆
・PERプレミアムは「高利益率×無借金経営×予想非開示によるアナリスト需給」への信認。逆に業績失速時のディスカウント余地も大きい
・短期的には配当利回り0.6%とインカム魅力度は限定的だが、ROE17%超・営業利益率50%台という希少性が長期投資家のコア保有需要を支える
・調整局面でのPER30倍割れ(株価53,000円台以下)が中長期エントリーレンジと推定
結論
キーエンスは2025年3月期に売上高1兆円の大台と営業利益率52%を同時達成し、国内製造業トップクラスの収益力を改めて示した。マクロ逆風下でも粗利改善とコスト統制で二桁増益を持続できる経営モデルが評価される一方、株価は高水準の期待を織り込んでいる。次の株価モメンタムを決めるのはAI活用製品の拡販スピードと海外投資サイクルの持続性だろう――高収益企業の長期成長ストーリーは続くが、エントリータイミングの見極めが一層重要になる。
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